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でも、だって、と言い訳を頭の中で並べながら、恥ずかしさに背中を小さく丸めて縮こまっていると、さっきまでの私と同じくらい無邪気な声に呼ばれる。
「ねえねえ、これ美味いよ」
そう言って阿部さんが箸で摘んで見せてくれたのは、黒豆だった。
彼のオススメだというふっくら艶やかに仕上がった黒豆は、外側に透明な蜜がかかってキラキラと輝いていた。
照明の加減か、やけに煌びやかに光って見えるのが不思議で顔を近付けると、それが照明のせいではなく、細かな金粉によるものだと気が付き「えっ」と声が出てしまった。
「これも手作りだよ」
そう聞かされ舌を巻く。
こんな立派で上等なもの、教えてもらわなければ絶対に手作りだとは思わなかった。
黒豆一つでどれだけ手が混んでいるのか、容器に入った料理の品数を考えると気が遠くなりそうだ。
私だって一通り料理はするが、自炊にここまで手間をかけた記憶はない。
どうせ誰も見てないし、と鍋やフライパンをそのままテーブルに運んで食事することだってあるのに。
「食べないと落ちちゃうんだけど」
いつまでもそれを眺めている私に阿部さんが苦笑すると、掴んだ黒豆を強引にこちらに寄越してくる。
迫り来る黒豆に反射的に身を引きそうになると「あ、こら」と止められ「早く」と急かされた。
大混乱のなかおずおずと口を開けば、箸伝いに、ひょいっと黒豆が飛び込んできた。
これはいわゆる「あーん」というやつではなかろうか。
「どう？美味いでしょ」
口の中いっぱいに広がる、黒豆の優しい甘さを噛み締めつつ「……めっちゃ美味いです」とそのおいしさに感動していると、
「やってみたかったんだよね。『あーん』ってやつ」
出来るだけ気にしないようにしていたことをしれっと突っ込まれ、咀嚼した豆を吹き出しそうになった。
慌てて口元を手で押さえ、どうにか飲み込む。
「や、やめてよ。変なこと言わないで」
もう自分で食べるから貸して。と私の態度にニヤつき始めた阿部さんから箸を奪おうとするも、寸前のところで交わされる。
なにすんだ、とムスッとした顔をすれば、
「いいじゃんいいじゃん、こんな時じゃないとAさんやらせてくれないし」
などとまったくもって意味のわからない理由を述べながら、阿部さんは実に楽しそうに片側の口角を持ち上げた。
こんな時じゃないと、ってどういう意味っすか。
こちらが聞き返そうとする前に「もっと食べなよ」と口に黒豆をねじ込まれた。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
