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＊
「はいこれ」
食べな。と私の手ごと包み込むように握らせてきたのは、このマンションから一番近いコンビニで売っている果肉たっぷりのみかんゼリー。
そこのコンビニは何故だかゼリーの種類がかなり豊富に取り揃えられていて、あと一品、デザートが欲しい時なんかによく利用していたから知っている。
同じメーカーでも白桃とかミックスフルーツとか他にも色々と味の種類があるが、冒険せず、私が好んで買うのは昔からこのみかんゼリー一択だった。
もしそれが無ければ代替品を購入することなく諦めて帰る。
それくらい好きなものをピンポイントで買ってくるなんてたまたまなのか、それとも阿部さんは知っていたのか、不思議でしょうがなかった。
お馴染みのそれを、物珍しげにまじまじと見つめてしまう。
「少しでも何かお腹に入れないと薬飲めないでしょ？他にもヨーグルトとか食べやすそうなもの、まとめて冷蔵庫に押し込んでおいたから、お腹空いたら食べなね」
やや呆気に取られながら、きちんと冷えているみかんゼリーと阿部さんを見比べた。
「あとそれから、これもあるよ」
そう言いながらテーブルに静かに置いたのはタッパーだった。
「…え、なんですか？」
お弁当箱サイズのそれには、可愛らしい花柄のデザインが施されている。
どこかで売っているようなものではなく、小綺麗なのにきちんと生活感のあるそれはおそらく私物だろう。
だけど男性が持つには小ぶりなサイズ感とか、なにより可愛い柄とか、阿部さんのだとすれば些か違和感があった。
こちらが分かりやすく首を捻ると、
「ふふ、これはねえ」
なんだか勿体ぶるように言いながら「じゃーん！」なんて効果音と共に蓋を開けて見せてくれたのは、少量ずつ綺麗に詰められた豪華なおかず──お節料理の品々だった。
「うわぁ」と声を漏らしタッパーに顔を近付け、ごくりと唾を飲む。
それからゆっくりと、阿部さんに視線を移した。
……まさかこれは、もしかしなくても。
「今から出掛けるって言ったら母さんに色々聞かれてちゃって、正直にAさんのこと話したんだよね。そしたら『風邪引いてたら家事もしんどいだろうし、お食事持っていってあげたら？』って料理を詰めてくれたの。我が家のおせちの寄せ集めになっちゃったんだけど……食べられそう？」
「………」
衝撃に、言葉が出ない。
「あれ、聞こえてる？Aさん？おーい」
「…ふ」
「ふ？」
「ふぇ〜」
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
