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地獄のような時間が早く終わって欲しい、でも阿部さんには帰って欲しくない。
そんなめちゃくちゃなことを念じながら黙々と作業を続ける阿部さんを眺めていると、
「心配しなくてもちゃんと綺麗に畳んでるから、少し横になってたら？」
なんて、見当違いな優しい小言が飛んできた。
そっちの心配じゃないんだけどな、と思いつつも私は素直に頷き、行儀悪く投げ出していた足を折りたたむと、そのまま勢いよく体を傾けてソファに寝転がった。
ぼふん、という思ったよりも大きな音と倒れ方に、阿部さんが驚いたように手を止めてこちらを見ている。
注意が飛んでくることはなかったが、何か言いたそうにしている訝しげな彼の目は「お前本当に大丈夫か」と訴えていた。
うとうとする暇もなかった。
私の三倍くらいの速さで洗濯物を畳み終えた阿部さんは、それらをラグの邪魔にならない場所に、種類ごとに綺麗に分けて置いてくれた。
そしてこちらがお礼を伝えるよりも早く立ち上がり
「ちょっと待ってて」
そう言い残して足早にキッチンへと消えていく。
何から何までタイミングを逃した私は、彼を目で追いかけることしかできない。
しかし部屋の構造上、ソファに寝転がったままでは背もたれが邪魔でキッチンまでは覗けず、すぐに見失ってしまう。
部屋の中を勝手に動き回られることに抵抗はなかった。
どちらかといえば阿部さんの動向が気になって「何してるんですかぁー」と寝転がったまま間延びした声で尋ねれば、すぐさま「すっかり忘れてたんだけど、差し入れ持ってきたのー」とこちらと同じ調子で返事が戻ってきた。
差し入れ。
そんなものいつの間に？と考えてみると、そういえば阿部さんが家に来てくれた時に手に何か持っていたような気がしてきた。
ただし、驚きとしんどさで記憶はかなり曖昧だったが。
私が最初に告げた「好きにしててください」という言葉はどうやら阿部さんの中でまだ有効のようで、キッチンからは冷蔵庫を開ける音、それからガサガサと何かを漁る音、冷蔵庫が閉まる音が順番に聞こえてくる。
「誰かと一緒に暮らしたらこんな感じなのか」と馴染みのない生活音に興味深く耳を澄ませているうちに、阿部さんはパタパタとスリッパの音を立てながらソファまでの短い距離を足早に戻ってきた。
その手にはティーカップスプーンと、何か二つくらい持っている。
ゆっくりと身体を起こし座り直した私の隣、おきまりの定位置に阿部さんも座った。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
