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ソファの上を移動して正面に向き合った阿部さんが、私の顔に人差し指を向けてくる。
「だから、Aさんのそういうところが信用できないって言ってんの」
「……あい」
ガチのお説教だった。
「一丁前に『心外な！』って顔するのも良いけど、それならちゃんと俺の話も聞きな」
「……あい」
「しんどい人がやることじゃないからね」
それ、と阿部さんの人差し指が私からまだ中身の残っている洗濯カゴに移動し、私は口元を引き攣らせた。
阿部さんの言いたいことはわかる。
ちゃんと聞いてるし理解もしているが、これを手放せば阿部さんがさっさと帰ってしまうような気がして素直に受け入れることが出来なかった。
彼を失望させたくなかったが、口下手な私が阿部さんを引き止めるにはこれに頼るしかないのだ。
勘の鈍い女のフリをするのは性に合わなかったが、この時だけは何を言われているのか分からないフリをして首を傾げながらすっとぼけるしかなかった。
ほぼ無駄な抵抗だったけど。
阿部さんは「そんなことしてもごまかされないから」と私を畳み掛けてきた。
さながら、振り間違いを誤魔化そうとしたメンバーを追い詰める時の岩本さんのようだ。
声を一切荒げていないのに、相手側に「ヤバい」と思わせるだけの迫力がある。
そうこうしているうちに阿部さんはソファから立ち上がり、私の隣に移動して座った。
かと思うと、「貸しな」と私の手から強引に、そして華麗に洗濯物を掻っ攫っていく。
ついでに隠そうとした洗濯カゴも一緒に。
「返して〜」
「ダメ。俺やるから」
「だって動けるもん」
「ダメ。動けてない」
「……阿部さんに悪い」
「ぜんぜん悪くないです。ハイ、さっさと場所交代して」
「くそぉー」
こうなってしまった彼に何を言っても無駄だった。
痛くない程度に肩をねじ込まれ、シッシッと半ば強制的にラグの上から追い払われた私は、仕方なしにソファに上がるしかなかった。
立とうとして気が付く。
決して無理していたつもりはないが、動こうとすればそれなりに気分も悪いし視界もぐらつく。
とにかく倒れないように、阿部さんにこれ以上迷惑を掛けないようにと、ナマケモノのごとくのろのろとした動作でソファによじ登っていると、背中に「ほらみたことか」と哀れみと呆れを込めた視線が刺さった。
ソファに座り込んでドヤ顔を見せれば、それを見届けた阿部さんが大きなため息をつく。
そしてこちらの挑発には乗ることなく、洗濯物を畳み始めた。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
