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「あの…非常識じゃないし、阿部さんが来てくれて助かったから、」
「ほんとに言ってる？俺いまのところコーヒー飲んでるだけなんだけど」
阿部さんはあからさまに怪訝そうな顔をした。
眉間に皺を寄せ、照明の加減で三白眼に影が落ちる。
だけど不思議と怖くなかった。
彼にしては珍しく、あまりにも不慣れなこの状況に感情が追いつかず困っているのだと、なぜか理解することができたのだ。
常識的で何をするにも思慮深い阿部さんが後先考えず、連絡も寄越さずに私の家に来るなんて、そんな『らしくない』大それた行動をとった答えを、私よりも、彼自身が探しているように見えた。
親心…もしくは、兄心か。
私からすればなんでもよかった。
理由はどうであれ、阿部さんが来てくれたのだから。
だけど彼にしてみれば、こちらの探るような言い方や控えめな態度が気を遣っているように感じたらしい。
そんなはずないのにね。
もどかしい。
誰とも争わず、波風立てずに過ごしたい。
こちら側の意見が通らなくても、意思が伝わらなくても別に良い。
そう思ってずっと過ごしてきたはずだったのに。
自分の感情が相手に正しく伝わらないのが、こんなにも苦しいと感じる日が来るなんて。
「ホント、マジだから。………だって、風邪引くと心細くなる、し」
ごにょごにょと、語尾を萎縮させながら伝えれば、阿部さんはあからさまにしまった、という顔をした。
私が人に対して素直になれない面倒な性格の持ち主だということを、初めて見抜いたのは阿部さんなのだ。
「あー…うん、それはそうだよね。ごめん、こんな時に変な言い方で突っかかった」
謝られ、必死に首を振る。
こんなやりとり、まったくもって普段の私たちらしくない。
さっきまで楽しく会話していたはずなのに、何がきっかけでこんな空気になってしまったのか。
私は彼にこんな顔をさせたくて引き止めているわけじゃない。
お互いがお互いに気を遣っているからこそ、どんどん変な雰囲気になっている。
「私って、そんなに信用ないかなぁ」
どんよりと濁り始めた空気を払拭するために冗談っぽく切り出したつもりだった。
とにかく、この流れを断ち切りたい。
そのためだったら笑われても良いからと、あえて明るく聞いたのに、肝心の阿部さんはこちらが分かりやすく出したパスをあっさりスルーしやがった。
マグカップを両手でしっかりと持ち「うん、全然信用してない」とほぼ無表情に告げたのである。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
