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カゴに入った洗濯物が残り三分の一ほどになったタイミングでふと顔をあげると、いつからそうしていたのか、こちらをジッと見ている阿部さんと目があった。
口元をもごもごと動かし、何か言いたそうにしている様子に思わず首を傾げる。
「なんですか？」
そう聞くと、その言葉を待っていたのか、彼は特に驚くことも焦ることもなく「いやさぁ、」といかにもな話し方で切り出した。
「Aさんが風邪引いたって聞いた時は不安だったし、電話越しに声聞いたときも『あ、これ結構やばいんじゃないか』って内心焦ったんだけど、なんだかんだ無事で良かったーって思ってさ」
言葉を一つ一つ選びながら、ゆっくりと噛み締めるように阿部さんは言うと、少しだけ視線を彷徨わせて目を伏せた。
「ホント、良かった」
ぽつりと落ちたのは、私宛ではない、聞こえるか聞こえないかの独り言。
それは音のない、静かな空間にすぐに溶けて消えていった。
「いや、あの…それはお騒がせを、しました…」
もっと上手に立ち回って気丈に振る舞うはずだった。
いつもみたいに「大丈夫ですって！」と言い返してやるつもりだったのに。
阿部さんが急に変なテンションで、変な独り言をぼやいたせいだ。
期待に膨らんだ鼓動は駆け足になり、そんな余裕なんてすっ飛んでしまった。
落ち着けよ。
そう突っ込みたくなるくらいの歯切れの悪いセリフとぎこちない笑顔で対応すれば、目を伏せていた阿部さんがこちらを見て口角をわずかに上げた。
その複雑そうな表情は私に対してか、それとも彼自身に対してかは分からない。
「結構悩んだんだよね、これでも」
「…悩んだ？」
「うん。Aさんの家に来るか、来ないか」
まさか。
少しもそんな感じには見えなかった。
言葉に詰まる私に、阿部さんは気まずそうに頬を掻く。
「こたつに入りながらグダグダ悩んでたんだけど、状況が分からないままいつまでもケータイ握りしめて不安になるのが性に合わなくてさ。そこまで気になるなら押しかけちゃえ！って思い立ったんだよね」
息を吐き出しながら、ため息混じりに阿部さんは言った。
「で、いまになって必死に頭の中で非常識すぎるこの状況を都合よく正当化してやんの。めちゃくちゃダサいじゃん」
えへへ、と笑った彼の眉は力なく下がる。
アイドルなのに私と同じくらいぎこちない、下手くそな笑顔だった。
それでも居心地が悪いのか、誤魔化すように握りしめていたマグカップを口元に運んでいる。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
