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昨日というか、つい今朝方まで彼を含めたいつものメンバーとは仕事をしていたし、その前の日も、その前の前の日も、なんなら年末はほぼ毎日顔を合わせていたはずなのに、こんな風にゆっくり会話したのは久々のことだった。
話していて思うのは、いくら好きでやっている仕事とはいえ、いつの間にか忙殺されていたんだな、ということ。
半年前までは決まった時間に出社して退勤するだけのデスクワーカーだった私が、三十代半ばにして転職し、日によって早朝から深夜まで不特定多数の色んな現場を駆け回るようになったのだから、身体の一つや二つ壊すのは遅かれ早かれの事象だったのだ。
むしろ休みの間に限界を迎えてくれて良かったのかもしれない。
阿部さんは私にお正月の予定まで話してくれた。
自分のことを他人に話さないことで有名な、あの阿部さんが、だ。
「いやもうさ、今年はひたすら寝正月にしてやろうと思って」
同じ都内に実家があるとはいえ、落ち着いて帰ることができたのは実に半年ぶりだったらしい。
何よりも喜んでくれたのは阿部さんのご両親で、かなり気合を入れて好物ばかりを用意してくれていたそうだ。
「嬉しいけど、あの量は食べきれん」
困り眉でそう話す阿部さんの顔は幸せそのものだった。
「阿部さん少食だもんね」
「うん。でもまあ、今年は弟も帰ってきてるから、二人で協力プレイしてどうにかする気持ちだけはある」
「弟……もしかして、あの伝説の兄者呼びをする…？」
「そうそう、そいつ。でもさすがにもう普通に兄貴って呼ばれてるよ」
「でも兄貴呼びなんだ」
家族が集まる大切な時に不可抗力ながら呼び寄せてしまったこと、そして今もこうして家族団欒の最中だったはずの阿部さんを意図的に引き止めていることを申し訳なく思いつつも、「じゃあもう帰らないとですね」と気の利いた言葉一つ掛けられない私は臆病者であり卑怯者である。
苦し紛れにカゴの中から洗濯物を手繰り寄せるも、それだって畳むスピードを上げられない。
阿部さんを見ていればなんとなく分かる。
彼のご家族もまた、穏やかで優しい人たちなんだろう。
いいなぁ、なんて素直に羨ましく思う。
会話の途中で小休止を挟むように、阿部さんは湯気の立つコーヒーを味わうように口に運んだ。
その姿はあまりにも優雅で絵になっていて、舘様にだって引けを取らない気品に溢れていた。
「ロイヤルぅ」と茶化せば、
「何言ってんの」
風邪っぴきさん、と鼻で笑われた。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
