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「困ったことあったら連絡してって言った側からこれなんだから」
「すんません」
「ちゃんと話してくれたから良かったけどさ。もし一人だったらどうするつもりだったの」
正直、そこまで頭は回ってなかった。
とはいえ、根性論で乗り切ろうとする私のことなので、きっと床を這いつくばってでもどうにかしていただろうが。
「へへへっ」
「誤魔化しかた下手くそか」
「まったく！」と受話器越しに頬を膨らませている、拗ねた彼の姿が容易に想像できて苦笑した。
「で、体調はどうなの？」
「あー…あんまり変わらないです」
さっきよりも悪化しました、とは言えず咄嗟に嘘をつく。
「とりあえず動けそう？」
「上半身が痛いですが、どうにか」
「…………」
「…阿部さん？」
「それって………やっぱりインフルっぽい？」
「いや、多分コンサートのときに力仕事をたくさんしたんで、筋肉痛ですね」
なにそれ、と聞かれたので、阿部さんに私が昨日どんな仕事をしていたかを簡単に説明した。
「そっか、じゃあ筋肉痛かな」
阿部さんの見解は私と同じだった。
インフルなのかと聞いてきたときは一瞬言葉に詰まり、声を顰めた阿部さんだったが、理由を知ると安心したようなため息を漏らす。
「でも熱が出てるのには変わりないからね」
「仰る通りで」
「心配ご無用です」と先手を打とうとしたら阿部さんに先回りされてしまった。
正月に風邪を引くのでさえ辛いのに、さらにインフルでしたなんて笑えない冗談だ。
結局は普通の風邪にせよ、こうして休暇中の彼を心配させてしまっているのに変わりはない。
その点は素直に猛省している。
なにより、ひよっこの私が年末にあれだけ多忙だったということは、阿部さんや他の方々はそれ以上に忙しかったはずなのだ。
それなのにみんなは元気で、自分だけがあっさりと倒れてしまったことが実に不甲斐ない。
そんな貧弱な体ではないと思っていた自分の身体に、少なからずショックを受けていた。
これが歳を取るということなのだろうか。
考えて、気持ちは落ち込むばかりだ。
俯き、自然に口から溢れた「ごめんなさい」という言葉が、真っ暗な部屋の中に落ちて消えた。
こちらの雰囲気を察したように、少しだけ電話の向こうが静かになる。
「Aさん」と呼ばれた名前にハッと我に返った。
違う。
そこまで神妙な言い方をするつもりはなかった。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
