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＊
大丈夫、これは本物の筋肉痛。
そう言い聞かせたものの、体調が悪化しているのは事実だったのでその安堵もすぐにため息に変わる。
ある程度の痛みは寝る前に飲んだ薬で抑えられているが、背面にのしかかる鉛の量が二倍に増えたような、痛みだけを取り除いた気持ちの悪い倦怠感がいつまでたっても取れない。
めちゃくちゃ怠い。
そして感覚的に、これからさらに熱が上がってくんじゃないかという気がした。
数年ぶりの風邪、恐るべし。
私が時間をかけて身悶えている間もケータイの光が消えることはなかった。
あーもう、こんなタイミングで誰だまったく。
心の中で文句を言いながらなんとかケータイを手繰り寄せて画面を覗き込むと、ディスプレイに表示されたのは「阿部さん」という文字。
阿部さん？
え、なんで？
さらに驚くことに、なかなか画面が消えないなーと思っていたら、それはチャットの通知ではなく着信だった。
不思議に思いながらも受話器のマークをタップする。
スピーカーモードに設定すると、顔のすぐそばに置いて力なく寝転がった。
「もしもーし、阿部です」
「……はい」
「うっわ、さっきより酷くなってる」
電話越しの阿部さんはいつも通りの様子だった。
陽気とまではいかないが、「よっ！」くらいの軽いテンションで話しかけてくる。
自分の部屋から掛けているのか、声がやや反響して聞こえる彼の周囲の音はやけに静かで、近くに誰かがいる気配はない。
普段よりも低い声で阿部さんに訊ねた。
「どうしたんすか」
「どうしたもこうしたも、風邪引いたって聞いて心配てたんだよ。
連絡くれたあとグループチャットの方も気になって見てみたけど特に何も流してなかったし、てことはAさんの状態知ってるの、どうせ俺だけなんだろうなーと思って」
違う？と聞かれ、静かに唇を噛んだ。
ちくしょう、ご名答である。
阿部さんの声は穏やかだった。
それに物腰も柔らかい。
だけどしっかりと棘のある言い方で攻撃してくるので返す言葉に困る。
横になっていた体勢からゆっくりと身体を起こし、暗闇のなかで光るケータイの前に正座した。
「いや、それは……ハイ。すみませんでした」
そう言って小さく頭を下げると、「謝って欲しいわけじゃないんだけど」とすかさずぴしゃりと叩かれる。
もちろん、雰囲気での話。
どういうわけだか、阿部さんはご立腹のようだった。
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泥濘(プロフ) - ちいさいばあばあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。話の展開がゆっくりですが、引き続き今後の展開を見守っていただければ幸いです。 (2月25日 22時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
ちいさいばあばあ(プロフ) - あべちゃんとマネちゃんが付き合う事になるといいですね。 (2月14日 17時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2024年1月25日 0時
