ガラスの靴を振りかざして3_緑 (ページ10)

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November_6 ページ10

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十一月も後半に突入した。
グループ全体の仕事は相変わらずコンスタントに忙しい。
それに伴い私の個人仕事の同行もぐっと増え、今では週の半分ほどの割合でメンバーの誰かと行動を共にしている。

「Aさん、申し訳ないんですけど着いたら起こしてもらえますか？」
「もちろんです。ちょっとでも寝てください」

テレビ局でのバラエティ収録を終え、次の取材場所に向かうタクシーの車中。
わずかな移動距離ですら惜しいのか、隣に座っている目黒さんが小声で話しかけてくる。
マスクと帽子の間から覗く瞼はもうすでに微睡んでいて、私が言うよりも早く、窓に体を預けて瞳を閉じてしまった。

いつもなら苦笑の一つでもこぼすところだが、ここ最近の目黒さんの個人スケジュールはメンバーの中でも特に過密で、年末までほぼ休みなくみっちりと入っていたのを思い出すと、自然と表情は険しくなってしまう。
その多忙ぶりはマネージャー陣のなかでも頻繁に話題に上がるのだが、休日をねじ込もうとするのを本人が良しとしないのだ。

「今だけだから、このチャンスを逃したくないです」

まっすぐな瞳でそんなことを言われてしまえば、私たちマネージャーは、彼がベストを尽くせるように、倒れてしまわないように万全の体制でサポートすることしかできない。
隣からの規則正しい小さな寝息を聞きながら、腕時計に目を落とした。
次の現場の入り時間まで、まだ少し余裕があった。

「運転手さんすみません、ちょっとだけ遠回りしてください」
「承知いたしました」

せめてこれくらいはさせてね、と心の中で呟きながら、窓の外に広がる昼下がりの銀座の街並みを眺める。

ふと「阿部さん、今日は何してるんだっけ？」と考えてすぐに、今日は田ノ上さんの同行でクイズ番組の収録をしているはずだと思い出した。

阿部さん自身も特に力を入れている個人仕事だと言っていたし、目黒さんも、もちろん他のメンバーだって仕事に全力で向き合って努力しているのだから、それがきちんと報われて次につながって欲しいと願うばかりだ。

私もそのための労力は惜しまないぞ！と静かに意気込んで、鞄の中から取り出した栄養ドリンクを一気に飲み干した。
この時期はどのチームのマネージャーも体力勝負になるから覚悟しろよーと先日の定例会で脅されたばかりだ。

空き瓶を鞄に戻し、気合を入れる。
この時間にできる作業は少しでも終わらせてしまおうとノートパソコンを開いた。