ガラスの靴を振りかざして3_緑 (ページ47)

今日:5 hit、昨日:196 hit、合計:230,325 hit

November_7 ページ47

＊

珍しく私のスケジュールがお昼どきに終わり、湾岸部にあるテレビ局から、次の現場に移動する田ノ上さんの送迎車で途中まで送ってもらうことになった。

場所はおハイソな街、銀座。
とはいってもその目的は、マネージャー陣営の最年少である外村さんへの誕生日プレゼントを探すためである。
これは最近知ったことだが、SnowMan同様、我々マネージャーも誰かが誕生日になると全員で一つのプレゼントを渡し合う習慣があった。
外村さんには日頃からかなりお世話になっていることもあり、今回、私がその役を買ってでたのだ。

最近こそ距離がぐっと近付き、敬語が取れたり「姉さん」「トム」と呼び合う仲にはなったが、元を糺せば私が今こうしていられるのは、外村さんが声を掛けてきてくれたから。
あの日、彼と阿部ちゃんに会っていなければ、今の私はいない。
だから外村さんには返しきれない恩がある。

マネージャーの誰かにプレゼントを送る際、阿部さんたちと違うのは、彼らのように本人に直接「何が欲しいですか」と聞くのではなく、サプライズで用意して渡すのが暗黙の了解になっていること。

「トム、何が欲しいって言ってました？」

なのでそれとなく、仕事で一緒になった外村さんをリサーチしてみたのだが、外村さんにはかなりお世話になっているとはいえ、他のマネージャーに比べたら彼と過ごした日数が圧倒的に少なすぎることもあり、私の成果は満足のいくものではなかった。
なんだったら、彼のプライベートも猫を一匹飼っていること以外、実はよく知らない。

すっかりお手上げ状態のまま、買い出しの日になってしまった。

「トムねぇ〜…最近忙しくてプライベートな話出来てないんだよね。お酒は好きだってのは前から知ってるんだけど」
赤ワインね、と田ノ上さんが言い、私は腕組みをする。

「うーん、高い赤ワインも悪くないですけど無くなっちゃうものですしねぇ。プレゼントだったら何かしら身につけるものの方が良い気がしなくもない…」
「俺もそう思った。多分他の連中もAちゃんと同じ事言うよ」

送迎車の助手席に座り、田ノ上さんと欲しいものの候補を出していくものの、なかなかこれだという確信めいたものには行き着かない。
仕事の合間に他のマネージャーにも聞いてみたものの、みんな田ノ上さんと同じような反応だった。

プレゼント選びは難航していた。