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その日は二十時に帰宅したので、今日も走るぞ!と決めていた。
エントランスで受け取った郵便物を抱えながら玄関を開け、まずはダイニングへ向かう。
郵便物はまとめてテーブルの上に積み重ね、ソファの端に鞄を置く。
すぐ脇にあるラックにダウンコートとマフラーを掛けた。
近くの空気清浄機とエアコンのスイッチを入れると、鞄の中からコーヒーを入れていたドリンクボトルと、先ほどの収録現場で貰った紙袋を取り出してキッチンへ向かう。
ドリンクボトルの蓋を開けて中をスポンジで洗うついでに、そのままうがいと手洗いも済ませてしまう。
タオルで手と口元を拭き、今度は冷蔵庫を開けた。

紙袋の中にはケータリングで余ったサンドイッチが入っている。
今日のスタジオ収録の担当が仲良くしている同年代の女性ADだったので、ケータリングを分けてもらったのだ。



楽屋で事務作業をしながら待機しているとロケ弁が運ばれてきたので、一旦パソコンを閉じて立ち上がる。
入り口付近に長机を並べようとする彼女を手伝い、世間話をしながらロケ弁やお菓子、サンドイッチやおにぎりの軽食などをジャンルごとに綺麗に分けながらケータリング場所を作っていく。

「ねえねえ、これ余るなら二つくらい貰って帰っても良い?夕飯にしたくて」
「いいよいいよ!どうせいつも残るから、先に好きなの持って行きなよ」

「食べ盛りの子たちが多いから先に選んじゃえ!」と人懐っこい笑顔でちゃっかりと私を唆してくる彼女は、中途採用で半年ほど前にテレビ局に入社した新人ADだった。

彼女の前職はメディア関係とは無縁の、バリバリの営業職だったらしい。
しかしながら現場経験はほぼないものの、そのコミュニケーション能力の高さと勘の良い仕事ぶりから入社後にメキメキと頭角を表し、通常なら三年から五年程度かかるADの下積みをスキップして、次回の番組編成から深夜バラエティのディレクターに昇進が決まったとのこと。

今日みたいに私が楽屋番をしている時にロケ弁の手配などで身の回りの世話をしてくれることが多く、お互いの境遇を知るなり、すっかり意気投合したのだ。
彼女は私がこの業界に入ってから、会社以外の場所で唯一出来た友人である。


ちなみに既婚者で三歳の息子もいるのだが、夫側の祖父母と二世帯住宅ながら一緒に暮らしているのと、夫も在宅勤務だからと就職を希望し、セカンドキャリアとして以前から興味があったこの業界を選んだらしい。
パワフルすぎる。

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作者名:泥濘 | 作成日時:2023年11月4日 17時

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