ガラスの靴を振りかざして3_緑 (ページ12)

今日:25 hit、昨日:196 hit、合計:230,345 hit

12 ページ12

＊

『ご近所さん同士』としての阿部さんとの関係も変わらず良好だ。

仕事面に関してもプライベートに関しても、引っ越したことで、いくつか大きく変わったことがある。

今までは仕事が終わると、メンバー全員を送迎車で送った後に一旦事務所に戻り、それから電車なりタクシーなりを使って帰宅していたのだが、複数人のマネージャーが同行するグループ仕事での送迎のときには「Aちゃんも降りていいよ〜」と、ちゃっかり阿部さんと一緒に帰宅させてもらえるようになった。
マネジメント以外の事務作業は、場所を選ばずどこでも出来る仕事ばかりなので、これがかなり時短になって助かっている。

「この時間になったら迎えに来るから、Aちゃんも一緒に乗ってきなよ」と阿部さんとの仕事がない日でも、途中で降ろせばいいし、と駅までピックアップしてくれることも多くなった。
気を遣ってもらって悪いなとは思いつつも、迎えにくる側も車内で色々な打ち合わせできて効率が良いとのことだったので、しっかり甘えさせてもらっている。

『阿部さん！明日の仕事、私も一緒です』
『了解！じゃあいつもの時間に行くね』

きっかけは思い出せないが、仕事や迎えが一緒になる前日に阿部さんにチャットを送れば、彼はわざわざ集合時間の五分前に私の家に立ち寄ってくれるようになった。
これも今では習慣化しつつある。

とある日のこと。

『Aさん、今家にいる？』
『あと一時間くらいで帰宅できます』
『クイズ番組の賞品でシャインマスカットとお肉貰ったんだよね〜』
『え、ありがとうございます！！！！』
『まだ何も言ってない(笑)』

そんなやりとりから始まり、「食べきれないからどうぞ」と阿部さんから和牛のステーキとシャインマスカットをお裾分けしてもらった。
その前は山梨県産のフルーツの盛り合わせ、その前の前は牛ほほ肉のパスタソースと、どうやら阿部さんは私の食生活を気にしてくれているようで、クイズ番組で何か賞品を貰うと頻繁に「食べる？」と声を掛けてくれる。

普段の食事はパパッと自炊するかファーストフードのテイクアウトで簡単に済ませてしまう私には、この高級食材はご褒美以外のなにものでもないので、こればかりは断ったことがなかった。

「メンバーにはあげないんすか？」と聞いたこともあるが「そこまでの量はないし、わざわざ保冷剤を準備して仕事先に持っていくのが面倒」とのことらしいので、それならばと毎回遠慮なく頂戴している。