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しばらくするとまた「あーん」という声が聞こえ、視界の端にストローが映り込んだので、特に警戒することなくストローの刺さった水を飲む。
そうそう、ちょうど水分も欲しかったところだ。
「Aさん赤ちゃんみたーい」
可愛いーなどとはしゃぐラウールさんの言葉と一緒に水を飲み下し、今の状況にハッと我に返る。
待て、おい。
マネージャーがタレントに何をさせている。
さすがに自分のことに集中しすぎだ。
「失礼しました。ありがとうございますラウールさ……」
「阿部でしたー」
てっきりこれもラウールさんの仕業だと思い込み、急いで顔を上げると、なぜか私が飲んだであろうストロー付きのペットボトルを持って含み笑いをしている阿部さんと目が合った。
思わず固まると、向い側で見てた舘様が呆れたようにため息をついた。
「阿部、お前もAさんをからかうな」
「ごめんごめん、背中丸くして夢中になってる姿が可愛くって」
困惑する。
阿部さんの、私に向けた「可愛い」という言葉に。
ラウールさんに同じことを言われた時には特に何も感じなかったのに、阿部さんに言われた途端、私の脳みそはその言葉をバカみたいに真面目に受け取り、記憶に刻み、大事にしまい込もうとした。
社交辞令だとわかっているのに、たちまち左胸のあたりがギュッと息苦しく、切なくなるのはなぜだろう。
悪びれる様子もなく、阿部さんがぺろっと舌を出して肩をすくめた横で、私は頬のてっぺんに集まってくる熱を誤魔化すのに苦労した。
ノートに書き出したものを向井さんに確認してもらう。
向井さんを取り囲むように、メンバーの皆さんも集まってきた。
「お風呂とトイレ別、寝室が欲しいってことは１LDKか１DKやね、あとは低層階、近所にスーパーがある、駅まで徒歩十分程度…」
なんやお姉は欲がないなぁ、と苦笑しながらも、向井さんは佐久間さん同様「ええやんええやん」と私の努力を労うように頷いてくれたのでひとまずはホッとした。
「これならたくさん物件ありそうじゃない？」
向井さんの手元を覗き込んだラウールさんが聞き、向井さんと佐久間さんが頷いた。
「借り上げ物件か普通の物件かの希望はあるん？」
「それも、ないですね」
「姉さん頻繁に引越ししなさそうだし、しばらく住むって考えたら、家賃の安さとか変なところで妥協して決めない方が良いんじゃない」
安い場所にはそれなりに不便があるもんだと、そうアドバイスをくれたのは渡辺さんだった。
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泥濘(プロフ) - まりあんぬさん» はじめまして、コメントありがとうございます。文字数が多く心配しておりましたが楽しんでいただけて嬉しく思います。更新にばらつきはありますが、これからもお読みいただければ幸いです。 (11月5日 17時) (
レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
まりあんぬ(プロフ) - なんかもう、本当に想像出来ちゃってにやにやしてみちゃいます。笑 更新楽しみにしてます♡ (11月3日 18時) (レス) @page48 id: 678c611ecf (このIDを非表示/違反報告)
泥濘(プロフ) - なつさん» はじめまして、コメントありがとうございます。拙作ではございますがお読みくださり、お褒めいただき嬉しく思います。不定期更新にはなりますが、これからも楽しんでいただけましたら幸いです。 (11月1日 22時) (レス) id: 014ca7ae0d (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - おもしろくて一気読みしてしまいました！これからも続き楽しみにしています！ (10月26日 9時) (レス) id: 763a883ffc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泥濘 | 作成日時：2023年10月15日 15時
