第五話 想定外 ページ6
ちとせ
｢本当の本当に土蜘蛛･･･？｣
土蜘蛛
｢勿論、嘘偽りなんぞ一切無い。｣
ちとせ
｢･･･でも、どうして人間の姿になったの？｣
土蜘蛛
｢んっ？･･･あぁ、先程の姿だと食べ物が小さくて喰いづらいと思ってな。｣
いや、違う。本当は、仮の姿になればちとせも話しやすいと思ったから変化したのである。握り飯を一つ手にしようとした時、ちとせのある異変に気付く。
ちとせ
｢･･･/////｣
頬がほんのりと赤く染まっていたのだ。
土蜘蛛
｢どうした、頬が赤いぞ？｣
ちとせ
｢えっ！？･･･そうかn･･･｣
グイッ
ちとせ
｢キャッ･･･！｣
ちとせの右腕を掴み強引に吾輩の元へ引き寄せる。前髪を横に流し露になった額に左手を当てる。
ちとせ
｢あ、あの･･･/////｣
土蜘蛛
｢ふむ、熱は無いようだな。･･･本当に大丈夫なのか？｣
ちとせ
｢･･･うん、何ともないよ/////｣
当の本人はそう言うもののやはり気になって仕方がない。
土蜘蛛
｢ちとせ、お主は吾輩にどんな感情を抱いておる？｣
ちとせ
｢･･･私が、土蜘蛛に？｣
唐突過ぎる質問に困惑するちとせ。吾輩とて、完全に心を開いた訳ではないし、妖怪からして赤子同然であるちとせを一人の女としてまだ見ることは出来ない。
ちとせ
｢うーん･･･ごめん、よく分からない。｣
土蜘蛛
｢フッ、そうであろうな。｣
妖怪と人間･･･所詮そんなものであろう。予想内の返答であったためそんなに驚く事はなかった。
ちとせ
｢でも、嫌いじゃないよ。｣
土蜘蛛
｢･･･何？｣
ちとせ
｢初めて会った時は物凄く怖かったけど、今はそんな事ないし、それに･･･土蜘蛛って見た目とは裏腹に凄く優しいんだね！｣
土蜘蛛
｢っ！？｣
思わぬ発言に固まったまま目を見開く。吾輩が優しい？今までに幾つもの都や村を潰し、慈悲無く多くの人間を喰らってきたこの吾輩がか･･･？こ奴は一体何を言っておるのだ。
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作者名：どんぐり | 作成日時：2020年11月29日 12時
