第三話 忠告 ページ4
？？？
｢･･･お主、名は何と申す？｣
ちとせ
｢っ！･･･ちとせです。｣
土蜘蛛
｢ほぉ、ちとせと言うのか。｣
しまった、吾輩とした事が･･･。本来の目的はこの小娘を喰らう事であるというのに、まさか名を伺うとは･･･。
ちとせ
｢あの、土蜘蛛様･･･｣
土蜘蛛
｢土蜘蛛でよい。｣
ちとせ
｢･･･えっ？｣
ちとせは勿論、吾輩自身が一番驚く。この僅かな時間で吾輩の身に一体何が起こったというのだ。
土蜘蛛
｢聞こえんかったのか？吾輩の事は『土蜘蛛』と呼べ。･･･良いな？｣
ちとせ
｢はi･･･｣
土蜘蛛
｢それともう1つ。敬語を使う必要は無い。｣
ちとせ
｢け、敬語？｣
ちとせは何の事やらと首を傾げる。これだから童子は･･･。
土蜘蛛
｢･･･フッ、幼いちとせには少々難儀であったな。良いか、敬語とはな目上の者に対して使うものだ。立場上、吾輩の方が年齢層が上であるからお主の言動は決して間違いではない。･･･だがな、無理に敬語を使われるとこっちの身にもなってみろ。かえって疲れる。｣
ちとせ
｢･･･｣
土蜘蛛
｢かと言って、生意気な口調で話しかけてみろ。その時は、容赦なくお主を喰らう。･･･分かったな？｣
ちとせ
｢ぅ･･･うん、分かった。｣
ちとせは焦った様子で小さく頷いた。随分と物分りの良い小娘で良かったと心の中で呟く。
土蜘蛛
｢分かれば良い。･･･さっ、そろそろ吾輩の元から去れ。これ以上側にいられては困るからな。｣
ちとせ
｢うん、さよなr･･･｣
土蜘蛛
｢待て、一つだけお主に忠告しておこう。｣
ちとせ
｢？｣
土蜘蛛
｢今日ここで吾輩と会い関わった事は他の人間には決して話してはならん。もし、破ったりでもしたら･･･｣
ちとせ
｢私を喰らう･･･だよね？｣
土蜘蛛
｢っ！そういう事だ。｣
･･･
ちとせ
｢ばいばーい！｣
ちとせは吾輩に向かって大きく手を振った後、森の奥へと姿を消した。
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作者名：どんぐり | 作成日時：2020年11月29日 12時
