第二話 出逢い ページ3
物音を立てた者の正体は見ず知らずの人間の小娘で、吾輩を見るなり一瞬にして顔を青ざめさせる。･･･だが、そんな事はどうでもいい。腹を空かせている中、まさか獲物の方から近付いてくるとは。今の吾輩にとって好都合だった。
土蜘蛛
｢くくく･･･お主、大妖怪である土蜘蛛の前に現れるとは、なんと哀れな･･･。｣
？？？
｢つ、土蜘蛛･･･？｣
まるで金縛りにでもかかったのように今いる場所から動けずにいた。
土蜘蛛
｢フッ、運が悪かったな。｣
ガツッ、ガツッ･･･
吾輩はゆっくりと小娘に近付く。身体は大人に比べまだまだ小さいが、あの白い肌･･･喰らうには勿体ないな。
グラッ･･･
土蜘蛛
｢うっ･･･！｣
バタッ
あと一歩っていうところで傷口が広がり力無く倒れ込む。
？？？
｢･･･っ、大丈夫ですか！？｣
恐ろしい目に遭ったにも関わらず吾輩の元へ駆け寄る。
土蜘蛛
｢･･･お主、吾輩が怖くは無いのか？｣
この一言に一瞬だけ固まり戸惑いの表情を見せるが、次の瞬間思わぬ返答が返ってくる。
？？？
｢も･･･勿論、怖いです。でも、こんなにも酷い怪我をしているのに放って置く事なんて･･･私には出来ないです。｣
幼いながらなんてしっかりとした子なのだろう。見た目のみならず言動からしてきっと育ちが良いに違いない。吾輩の勝手な想像ではあるが、童子とは吾輩のような化物を見るとすぐに泣きわめく。それに、親無しでは生きる事が出来ない非常に弱い存在だ。
スッ
土蜘蛛
｢なっ･･･！？お主、何を･･･。｣
突然の出来事に思わず動揺する。小さくも温かな手が傷だらけの身体に触れ、何度も何度も優しく撫でてきた。いや、驚いたのはそれだけではない。人生で初めて人間が化物である吾輩に触れてきた瞬間でもあるのだから。
？？？
｢土蜘蛛さんの身体が･･･早く治りますように。｣
土蜘蛛
｢･･･｣
あぁ、なんて愚かなのだろうか･･･。
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作者名：どんぐり | 作成日時：2020年11月29日 12時
