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「ほんとに、ごめん」


卒業式のあのことを言っているのだということはすぐにわかった。


震える彼の言葉に、私は心臓をぎゅっと締め付けられるような感覚になる。


「どうして、」


そこまで言って、私は言葉を詰まらせた。


なんで、いまさら。


それなら、どうして、あのとき追ってきてくれなかったの。


色々言ってやりたいことはあったけど、そこから逃げたのは自分自身なのだという事実が、私には文句を言う権利などないんだと思わせた。


「ほんとはもっと早く言わなきゃと思ってた。だから、同窓会行ったらAちゃんに会えるかと思っていったら、おらんし」


夜の風がふいて、ざわざわと公園の木々を揺らした。


「だから、見つけたときは驚いた。もう、見失ったらあかんと思ったら走ってた」


坂田くんのガーネットのような瞳は、どこまでも真っ直ぐで、そこは前から変わってないのだと思った。


「……私も、ごめん。坂田くんが悪くないの、頭ではわかってた。でも、逃げたのは私だから……ごめんね」


そういうと、さらりと彼が私の頭を撫でた。


突然のことに、びっくりして体を固くすると、くすくすと坂田くんは笑った。


「……ほんま、変わってへんなあ」


「坂田くんは、変わったよね」


「そう?」


「うん。なんか、大人っぽくなった。大学生って感じ」


「制服じゃないからかもなあ。それを言うなら、Aちゃんも変わったで?」


「制服じゃないから?」


「ちゃうって。なんかこう、綺麗になった」


眩しいものを見るかのように坂田くんの目が細められて、私は恥ずかしくなって坂田くんから目を逸らした。


「け、化粧のせいかも!」


「そうなんかなあ」


「そうそう。高校の頃はしてなかったし!」


「まあ、そういうことにしといたるわ。時間も時間やし、送ってくよ」


坂田くんはそう言って立ち上がった。


「大丈夫だよ。駅、すぐそこだし」


思わずそう答えると、坂田くんは頭を横に振って、


「女の子なんやからあかんって。それに、俺、コンビニにも行きたいし」



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りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます!またコメントをいただけて嬉しいです!続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします! (2019年12月24日 11時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは!グッドイブニング・トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します!浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね!元々惚れてますけど余計に惚れますね!応援してます!更新頑張ってください! (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます!どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りひと | 作成日時:2019年12月13日 23時

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