. ページ13
「ほんとに、ごめん」
卒業式のあのことを言っているのだということはすぐにわかった。
震える彼の言葉に、私は心臓をぎゅっと締め付けられるような感覚になる。
「どうして、」
そこまで言って、私は言葉を詰まらせた。
なんで、いまさら。
それなら、どうして、あのとき追ってきてくれなかったの。
色々言ってやりたいことはあったけど、そこから逃げたのは自分自身なのだという事実が、私には文句を言う権利などないんだと思わせた。
「ほんとはもっと早く言わなきゃと思ってた。だから、同窓会行ったらAちゃんに会えるかと思っていったら、おらんし」
夜の風がふいて、ざわざわと公園の木々を揺らした。
「だから、見つけたときは驚いた。もう、見失ったらあかんと思ったら走ってた」
坂田くんのガーネットのような瞳は、どこまでも真っ直ぐで、そこは前から変わってないのだと思った。
「……私も、ごめん。坂田くんが悪くないの、頭ではわかってた。でも、逃げたのは私だから……ごめんね」
そういうと、さらりと彼が私の頭を撫でた。
突然のことに、びっくりして体を固くすると、くすくすと坂田くんは笑った。
「……ほんま、変わってへんなあ」
「坂田くんは、変わったよね」
「そう?」
「うん。なんか、大人っぽくなった。大学生って感じ」
「制服じゃないからかもなあ。それを言うなら、Aちゃんも変わったで?」
「制服じゃないから?」
「ちゃうって。なんかこう、綺麗になった」
眩しいものを見るかのように坂田くんの目が細められて、私は恥ずかしくなって坂田くんから目を逸らした。
「け、化粧のせいかも!」
「そうなんかなあ」
「そうそう。高校の頃はしてなかったし!」
「まあ、そういうことにしといたるわ。時間も時間やし、送ってくよ」
坂田くんはそう言って立ち上がった。
「大丈夫だよ。駅、すぐそこだし」
思わずそう答えると、坂田くんは頭を横に振って、
「女の子なんやからあかんって。それに、俺、コンビニにも行きたいし」
.
253人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます!またコメントをいただけて嬉しいです!続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします! (2019年12月24日 11時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは!グッドイブニング・トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します!浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね!元々惚れてますけど余計に惚れますね!応援してます!更新頑張ってください! (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます!どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします! (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りひと | 作成日時:2019年12月13日 23時