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春休みのテーマパークは、それはもうこれ以上ないほどごった返していた。
少しでも離れてしまえばはぐれてしまうことだろう。
そんな中、早坂さんはずっと坂田くんの隣。
まるでカップルみたいだ。
すれ違う学生カップルと見比べて私は思った。
私はというと、あまり話さないように、でも話さなすぎて逆に目立たないように、微妙なバランスをとりながら(これは得意科目だ)、引き立て役に徹していた。
そんな私に気を遣って、ちょくちょく話しかけてくれる折原くんは、やっぱり人柄がいいのだろう。
ジェットコースターに乗って、お昼を過ぎた頃には、私は気を遣いすぎて、ちょっと疲れてしまっていた。
好きなアトラクションも純粋に楽しめないし、いいなと思っていたぬいぐるみも買えないでいるし、何よりも早坂さんの視線が痛い。
ちょっとお腹もすいてきたが、前を歩く2人はアトラクションめぐりに夢中でそんなことを考える暇もなさそうだ。
なんだかんだ言って、坂田くんも私といるときより楽しそうに見える。
「なあ、俺そろそろ腹減ったんやけど」
折原くんが前をどんどん歩く坂田くんと早坂さんに声をかけた。
「え、ほんま？もうそんな時間やった？」
坂田くんはどれだけたくさん乗れるかチャレンジしたいと言っていたこともあって、それに夢中になっていたようだ。
「2人はアトラクション乗っててええから、俺はAさんと昼食べてくるわ」
チケットの時間もあるからと折原くんはそれだけいうと私の方を振り返った。
え、と私がいうよりも先に、
「じゃ、行こか」
と折原くんは私に笑いかける。
ちらりと早坂さんを見ると、さっさと行けよと言わんばかりに睨まれた。
私は反射で「うん」と答えると、早坂さんは坂田くんの腕を引っ張り、人混みの中へと紛れていってしまった。
「さ、俺らもご飯行きましょか。なに食べたい？」
気は遣わんでええからね。と言う折原くんは、私のことはお見通しらしい。
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作者名：りひと
| 作成日時：2019年11月12日 17時
