グットイブニング・トウキョウ【あほの坂田】 (ページ22)

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「めっちゃ面白かったな！」

「そうだね」

映画を見終わって、私達は昼食を食べるためにフードコートに立ち寄った。

私はうどん、坂田くんはハンバーガーだ。

映画はもちろん素晴らしかった。

王国の王女は触れた物を凍らせる力を持ち、それが妹を傷つけてしまうことを恐れて心を閉ざしていた。力を制御できず王国を凍てつく冬世界に変えてしまった王女は、雪山の氷の城で雪の女王として生きることを選ぶ。姉妹の真実の愛をめぐる壮大なストーリーだった。

見てたらあの世界観にもっといたくなって、テーマパークに行きたくなってしまう。

「なんか、見てたらディ○ニー行きたくなってきたわ！」

「あ、それわかるかも」

坂田くんも同じだったのか、彼はマジすごかったー!と何度も言っている。

「じゃあさ、次は一緒にディ○ニー行こ!」

そう言って、彼はがぶりとハンバーガーにかじりつく。

「うん。楽しみだね」

彼はほんとうに、ずるい人だ。

いつの間にか、坂田くんのペースに巻き込まれていく。

私が思ったことを言ってくれる。
つかず離れず、心地よい距離感を保ちながら、気づいたら近くまで来ている。

そんな感じだ。

だからだろうか。彼に対しては、私は思わず自分のしたいこと、思ったことを口に出してしまうのだ。

「真実の愛、かあ……」

私にはまだよく分からない。

けれど、映画の雪だるまのキャラクターは

「愛っていうのは、自分よりも誰かのことを想うことだよ」

と言っていた。

もしそれが本当なら、私は誰のことも愛してないんじゃあないか。

私は自分が傷つくのが怖くて、いつも周りを気にして、穏便にすませるようにだけ気をつけてきた。

いつまで経っても他人を思いやれない私は、きっとプリンセスとは対極だろう。

「……Aちゃんはさ、真実の愛ってなんやと思う？」

「うーん、、よく分からない、かな。映画の中では、自分よりも誰かのことを想うことって言ってたけど」

「俺的には、思うだけじゃなくて、「俺はあなたの事が大切です」ってちゃんと言葉にすることも大切やと思うんだよね」

「……なるほど」

愛というものがますます分からなくなってくる。

きっと愛っていうのは、形がないから何にでもなれるのかもしれない。

人によって愛というものは、色んな形の、様々な色をしているのだろう。