グットイブニング・トウキョウ【あほの坂田】 (ページ20)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:90,607 hit

. ページ20

冬が来た。

3年生の先輩たちはあともう少しで入試ということもあって、すこしピリピリモードになっている。

冬が終わったら、私も受験生になるのかと思うと、今から憂鬱だ。

クリスマスはもうそこまで迫っていて、それが終わると冬休みだ。

ちょうど昨日、恒例となったテスト勉強会をしながら、坂田くんと冬休みには映画を見に行こうという話になっていた。

話にのぼったのは、今度上映されるディ○ニーの新作アニメーション映画だ。

あの夏から、坂田くんは私をAちゃんと呼ぶようになった。

それから、高校では話さなかったのが、話すようになった。

それは周囲にとっても驚きだったらしい。

それはそうだ。と思う。

人気者でクラス内でも上のグループにいる坂田くんと、地味で下のグループの私が最近仲がいいように見えるのだ。

周りからしたら不思議だろうし、なにより、坂田くんは人気なのだ。

つまり、モテる。

坂田くんを好きな子達からしてみれば、ぽっと出の私は、急にでてきたライバルとでも言えよう。

そんなふうに見られても、私は坂田くんに釣り合わないから付き合いたいだなんて思ってないのに。

「Aちゃん、坂田くんと仲良かったっけ？」

ともちゃんはお昼ご飯を食べながら、私にそう聞いた。

教室は昼休みだからみんな好きな人たちと机を囲んで食べている。

「うーん、普通だと思うけどなあ」

「そうなんだあ。てっきり、付き合ってるのかと思った」

「ええ、そんなわけないよ。第一、私なんて恐れ多くて坂田くんと付き合うなんて死んでもできない」

「なにそれ。でも、Aちゃんらしいといえばそうかもね」

ともちゃんは

「坂田くん、モテるし好きになったらライバル多くて大変そう」

なんて言いながらパックのオレンジジュースをずすっと啜った。