グットイブニング・トウキョウ【あほの坂田】 (ページ18)

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気づいたら、目の前にプールがあった。

プールサイドにリッキーがひょっこり顔を出して、私を心配そうに見つめている。

「じゃあ、まずは挨拶してみましょう！」

お姉さんの言葉通りに右手をリッキーに近づける。

リッキーは少しだけジャンプして鼻先をちょん、と手のひらにくっつけた。

かわいい。ちょっとだけ緊張がほぐれて、リッキーを見ると、今度は笑っているようにみえた。

動物の表情なんて、こっちの感覚ひとつで捉え方は変わるのかもしれない。

「おお〜!!賢いなあ！」

隣の坂田くんも同じようにしてイルカと挨拶をしている。

「じゃあ次は、フラフープを持ってくださいね！」

言われるがままにフラフープを受け取って、プールサイドに立つ。

手をめいっぱい伸ばしてプールにフラフープを向けると、その輪の中をリッキーがジャンプしてくぐっていった。

じゃばーんっ！と水しぶきが上がる。

子供に戻ったみたいな感じがした。なんだか楽しくなってきてしまって、私は声を出して笑っていた。

心から楽しいと思えたのは久しぶりだった。

いつも、人の顔色を伺いながらビクビクしてたからかもしれない。

イルカにはヒーリング効果があるというのを聞いた事がある。

いつも周りを気にして固まってしまっていたものが、リッキーといると少しずつ解れていく気がした。

私の心が乗ってきたのがわかったのか、リッキーはサービスだと言わんばかりに、高く飛び上がって、大きな水しぶきをあげた。

「うおっ!!」

坂田くんが横で驚いた声を上げた。リッキーの水しぶきで、私と坂田くんはびしょ濡れだ。

「ちょっと、リッキー!？」

リッキーのアドリブだったらしく、飼育員さんが後ろで慌てているのがわかった。

「大丈夫ですよ。リッキー、ありがとう」

リッキーにお礼を言うと、リッキーはどういたしましてと返事がわりにくるりと一回転した。