. ページ39
夢というものは、突如として終わりがやってくるものだ。
この心地よい関係が、永遠に続くわけがないと心のどこかで思っていながら、もしかしたら彼とずっと生きていけるのではないかと、期待をしてしまっていた。
種族の違う、生きる世界の違う私たち。何ものにも守られることのない関係は、文字通り、夢から醒めたように、残酷に終わりを告げた。
夜のあとには必ず朝がくるように。
あまりにも唐突で、最初は冗談かなにかかと思った。もしくは、夢を見ているんじゃないかと。
朝起きたら、隣に志麻がいなかった。
またリビングでゲームでもしているのかと思って部屋を出れば、そこにもいない。
テレビすらついていない。暖房も、何もかも寝る前のままだ。
「志麻？」
呼んでも返事がない。こんな朝から、どこに出かけたというのだろう。
ソファの上には彼が着ていたスウェットが綺麗に畳んで置いてあった。急に、頭がぐらりとして悪い予感が体を突き抜けていく。
慌てて彼が出会った時に着ていた紫色の警官服を探してクローゼットを開ければ、そこはもぬけの殻。
足元からガラガラと崩れていく音がする。立っていられなくて、思わずその場に崩れ落ちた。
志麻が、いなくなった。
何が起きたか分からなかった。
どこを探しても、彼の痕跡は見当たらない。
唯一、残されていたのはKOOL。彼が身につけていたであろうスウェットを抱きしめると、あの落ち着くムスクの香りがした。
それは、志麻がここにいた証拠だった。
「志麻…………っ」
気づいたら泣いていた。それなのに、部屋は静かで、なんの返事も帰ってこない。ぼろぼろと零れる涙を優しく拭ってくれる彼はもういないのだと突きつけられる。
真冬の凍えるような冷たさのフローリングの上で、私はそこでしばらくうずくまっていた。
志麻がいなくなった。
なんの前触れもなく、さよならの言葉もなく。
私たちの関係は、ある日突然、終わりを告げた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 385人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りひと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけて何よりです。がんばりますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月21日 22時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 感情移入してしまうくらい本当に面白いです（ ; ; ）更新頑張ってください！楽しみに待っています！ (2020年9月21日 4時) (レス) id: d65a61624a (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まーかーさん» コメントありがとうございます。がんばります！ (2020年9月12日 12時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
まーかー(プロフ) - 続編おめでとうございます！あぁ...すごい切ない展開...更新がんばってください！ (2020年9月11日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» コメントありがとうございます。マルボロの話はずっとどこかで出したいと思っていたので私も嬉しいです。志麻さんの話はなかなか書く機会に恵まれず、完結している作品がないので、このお話は最後まで書けるよう頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年9月8日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りひと
| 作成日時：2020年9月3日 21時
