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やけに歯切れが悪い。
じれ始めた私の空気に気づいたのか、彼は慌てて言葉をつないだ。
「俺さ………実は、あいつと別れたんだ」
意味が脳まで届いたとたん、
「はあ？」
と声が裏返ってしまった。
「だって、そんな………子どもは？」
「生まれてないよ」
「………どういうこと、それ」
「ずっと嘘ついてたんだ、彼女」
「嘘って………そんな、まさか」
「いや、マジで。子どもなんか、最初からできてなかった。4ヶ月目くらいまでは妊娠してるふりを装って、その後は想像妊娠だったんだとか、早期流産だったかもしれないとか、わけのわかんないこと言ってヒステリー起こしてたけど、あとから考えれば俺にもわかるよ。あれは初めから、俺の逃げ場をなくすための嘘だったんだって」
言葉も出なかった。
「正式に別れたのはもう、3ヶ月も前になるんだけど………」
彼は苦笑いをして言った。
「やっぱ、あれだな。人の不幸の上に築き上げた幸せなんて、脆いもんだな」
久々に、血がたぎるほど頭にきた。
「ちょっと待って」
「いや、誤解しないで欲しいんだ。今日会いに来たのは、あっちがダメになったからこっち、ってわけじゃなくて………ただ、俺は間違えちゃいけないことを間違えたんだなって」
彼は口もとに笑いを浮かべたまま、言葉を続けた。
「本当に取り返しのつかないことをしたよ。あれだけ君のことを傷つけておいて、自分たちだけ幸せになろうなんてさ。許してもらおうってわけじゃないけど……ちゃんと、謝りたくて」
「ちょっと待ってったら！」
我知らず大きな声になった。マンションから出てきたサラリーマンが、私たちの横をすり抜けざまに訝しそうに振り返る。
もう、５分ほど経っただろうか。家で待ってくれている人のことが気にかかりながらも、どうしてもこれだけは言わずにはいられなかった。
「ねぇ、さっきからどれだけ私に失礼なこと言ってるか、分かってる？」
「あ、ごめん。なにか気にさわったんなら、」
「そう。やっぱり、自覚はないのね」
こういう人なのだ。致命的に想像力に欠けている。相手を思いやる気持ちがないのだ。付き合っていた頃は、脇の甘さだと思って目を瞑っていられた。
でもいまは………。
深く息を吸い込む。
「幸せ自慢をどうもありがとう」
「え？」
目を丸くする彼を、私は真正面から睨めつけた。
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りひと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけて何よりです。がんばりますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月21日 22時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 感情移入してしまうくらい本当に面白いです（ ; ; ）更新頑張ってください！楽しみに待っています！ (2020年9月21日 4時) (レス) id: d65a61624a (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まーかーさん» コメントありがとうございます。がんばります！ (2020年9月12日 12時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
まーかー(プロフ) - 続編おめでとうございます！あぁ...すごい切ない展開...更新がんばってください！ (2020年9月11日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» コメントありがとうございます。マルボロの話はずっとどこかで出したいと思っていたので私も嬉しいです。志麻さんの話はなかなか書く機会に恵まれず、完結している作品がないので、このお話は最後まで書けるよう頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年9月8日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年9月3日 21時
