佳宵 ページ4
志麻がうちに来てから1ヶ月が経過した。
けれど、志麻から仲間が見つかったという話は少しも聞かなかった。志麻がなにも言わないのは、私に心配をかけたくないから、居候という立場もあって迷惑をかけたくないからだろう。
「ねぇ、志麻」
「ん？」
志麻の作ってくれたカレーを食べながら目の前に座る彼にこう言った。
「今日、志麻が出かけるとき一緒に行っていい？」
「は？」
志麻のスプーンがピタリと止まり、驚いた顔でこちらを見る。
「だから、このあと一緒に行ってもいい？」
「いや、あかん訳やないけど………」
彼はあからさまに視線を逸らした。
「けど？」
「魔力戻ったから、いまは魔法使って探してんねん」
言いにくそうに、志麻は言う。魔法ってどんなやつだろう。ぱっと思い浮かぶのは、空を飛ぶことだけど、けれと、ゾンビが空を飛ぶなんて聞いたとこないし、ましてや瞬間移動なんていうのも想像できない。
「魔法って、どんなの？」
「俺はゾンビやからそんなに魔力量ないから、魔力探知くらいやけどな。それ使って、魔物のいる場所を特定するんよ」
「ふうん」
「なに」
「なんか魔法って、空飛んだりするのかと思ってた」
「そりゃあ、魔力量のあるやつはできるけど、俺はむり」
「残念」
私が肩をすくめると、志麻はおかしそうに笑った。
「だって、見てみたいじゃない。魔法なんて、見れるものじゃないし」
「たしかに、人間からしたらそうかぁ」
志麻の仲間のうちのひとりは魔法つかいらしいから、きっと魔法なんて日常茶飯事なんだろう。それは少しうらやましい、と思う。
「ねえ、魔法見てみたい」
「………少しだけやからな」
志麻はまんざらでもなさそうな顔で頷いた。その顔に、思わず吹き出しそうになるのを堪えながら「ありがとう」と言う。
食器類を洗ってから、コートを羽織って外に出る。もう12月だから、夜は冷える。明日は日曜だから、多少夜更かししても問題ない。
志麻は魔法で人間の姿になっていた。そう言えば魔法を見たいなんて言っていたけど、これもたいした魔法だったと思い出す。
「ゾンビってすごいのね」
しげしげと志麻の顔を見ながら言うと、本人は変な顔をした。
「なんやねん、急に」
「魔法使えるって便利だなぁと思って」
「………どうやろうな。ほら、行くで」
歩き出した志麻の隣を歩き出す。外には星がきらめいていた。
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りひと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけて何よりです。がんばりますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月21日 22時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 感情移入してしまうくらい本当に面白いです（ ; ; ）更新頑張ってください！楽しみに待っています！ (2020年9月21日 4時) (レス) id: d65a61624a (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まーかーさん» コメントありがとうございます。がんばります！ (2020年9月12日 12時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
まーかー(プロフ) - 続編おめでとうございます！あぁ...すごい切ない展開...更新がんばってください！ (2020年9月11日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» コメントありがとうございます。マルボロの話はずっとどこかで出したいと思っていたので私も嬉しいです。志麻さんの話はなかなか書く機会に恵まれず、完結している作品がないので、このお話は最後まで書けるよう頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年9月8日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年9月3日 21時
