月露 ページ24
目覚めは最悪だった。
ずきりと痛む頭に顔をしかめる。二日酔いだ。
ひどく喉がかわいて、私は瞼をあけると同時に、どこかに水はないかと視線を動かした。
あいにく所望するものはなく、代わりに目の前には志麻の寝顔があった。
昨日の決起会、途中から記憶があいまいだ。どうやって帰ってきたかもほとんど覚えていないが、ここで寝ているということは無事に帰ってこれたということだろう。
そっと体を起こすと、頭痛と吐き気がひどくなる。
しんと静まりかえった室内で、痛む頭をおさえながらそっとベッドから足を下ろした。
冬の早朝、身体がぶるりと震えた。
ガウンを羽織って毛糸の靴下を履いて寝室を出て、冷蔵庫から水を取り出してひとくち飲んだ。ここまでひどい二日酔いは初めてだ。もしかしたら、もう歳なのかもしれない。
ソファに座って、少しずつ水を飲み進める。カーテンの向こう側はうっすらと明るくなっていた。リビングの暖房を入れて、テレビをつける。時刻はまだ7時だった。道理で明るいはずだ。
テレビの雑音が頭に響く。いつもなら気にならないものもひどく不快に感じてしまうのは、二日酔いだからだろう。
テレビを消してのろのろとカーテンを開けると、外は快晴だった。
少しでもスッキリしたくて外に出る。澄んだ空気を肺いっぱいに吸い込むと、頭痛が少し楽になった。
マルボロを取り出すと、1本銜えてライターで火をつける。
紫煙が緩やかな風に乗って、ゆらりと右に流れた。
その動きを目で追って、それから仰向いて空を仰ぐ。
文句のつけようのない青空を眺めながらぼーっと煙草をふかしていると、不意にベランダの扉がガラリと開いた。
「志麻、起きたの？」
「ん。また煙草吸っとるん」
志麻はいちどリビングに戻ると、ブランケットを持ってきて私の肩にかぶせた。そのまま後ろから覆い被さるように後ろから抱きしめられる。
「だって、空気が美味しいんだもの」
「矛盾しとるやろ、それ」
「そう？」
後ろを向いて彼を見上げれば、紫色の髪に寝癖がついているのが目に入った。手を伸ばしてなおしてやると、彼はくすぐったそうに小さく笑った。何度か撫でてやればすぐに直った。
「二日酔いは？」
「してる」
私が薄く笑うと、志麻は呆れたようにため息をついた。1本目を吸い終わり、灰皿に押し付ける。2本目を取り出そうとして、志麻がそれを止めた。
志麻を見上げれば、熱を持った瞳とぶつかる。
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りひと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけて何よりです。がんばりますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月21日 22時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 感情移入してしまうくらい本当に面白いです（ ; ; ）更新頑張ってください！楽しみに待っています！ (2020年9月21日 4時) (レス) id: d65a61624a (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まーかーさん» コメントありがとうございます。がんばります！ (2020年9月12日 12時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
まーかー(プロフ) - 続編おめでとうございます！あぁ...すごい切ない展開...更新がんばってください！ (2020年9月11日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» コメントありがとうございます。マルボロの話はずっとどこかで出したいと思っていたので私も嬉しいです。志麻さんの話はなかなか書く機会に恵まれず、完結している作品がないので、このお話は最後まで書けるよう頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年9月8日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年9月3日 21時
