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目が覚めたとき、最初に視界が捉えたのはテレビの画面だった。
画面の中では、出てきたゾンビが撃たれている。音量は小さくしていたらしい。耳をすまさなければ聞こえない程度のものだった。
身動ぎすると、いつもの枕ともクッションとも違う感触に気づく。なんだろうと思ったとき
「起きたん？」
と上から声が降ってきた。頭だけぐるりと回してそちらを向くと、志麻の顔が見えた。彼の顔は画面に向いたままで、なるほど、志麻がゲームをしていたのか、と納得する。
「ごめん、重かったよね」
志麻の膝をかりていたと分かり起き上がると、
「ぜんぜん。疲れてるならまだ横になっとけば？」
と彼は言う。
「ううん、大丈夫。ところで、なんで私、ここにいるの？」
「覚えてないん？」
少し驚いた様子で彼は目だけちらりとこちらを見る。思い出しては見るけれど、どうやってここにきたのかすら覚えていない。
「うん」
「ふーん」
私の反応に、志麻がニヤニヤとしだす。
「え、なによその反応」
「いーや、なんも？」
「なにそれ怖いんだけど」
「可愛かったなぁ、A」
ふふふ、と意味深な笑い方をする志麻に、私は一抹の不安を覚える。
「私、なにかやっちゃったの？」
志麻にもういちど聞くと、どうやらちょうどセーブポイントだったらしい、彼はコントローラーをテーブルに置いて、ようやくこちらに顔を向けた。
「なんもしてへんて。寝ぼけながら俺んとこ来て「俺と一緒におる」って言うてそのまま寝ただけ」
志麻の言葉がすぐには理解できなかった。まさかそんなことを、寝ぼけているとはいえ自分が言うとは夢にも思わなかったのだ。未だに信じがたくて、恐る恐る私は彼の顔を見た。
「………そんなこと言ったの？」
「言った言った。可愛かったわぁ」
さっきから変わらずニヤニヤとした顔で志麻はこちらを見ている。
「忘れて。いますぐ」
「忘れませんー。むしろもうちょっと甘えてくれてもええんとちゃう？さっきみたいに」
「いやよ、恥ずかしい」
「ええ、なんで」
なんでやねん、とふてくされる志麻を放って、私は話題を変えようと立ち上がった。
「もうすぐお昼なんだ。ご飯作るね」
「ちょ、逃げんなって」
「なににしようかなぁ」
言いながら、笑みがこぼれた。自然と笑える今の自分は、嫌いじゃなかった。
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りひと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけて何よりです。がんばりますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月21日 22時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 感情移入してしまうくらい本当に面白いです（ ; ; ）更新頑張ってください！楽しみに待っています！ (2020年9月21日 4時) (レス) id: d65a61624a (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まーかーさん» コメントありがとうございます。がんばります！ (2020年9月12日 12時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
まーかー(プロフ) - 続編おめでとうございます！あぁ...すごい切ない展開...更新がんばってください！ (2020年9月11日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» コメントありがとうございます。マルボロの話はずっとどこかで出したいと思っていたので私も嬉しいです。志麻さんの話はなかなか書く機会に恵まれず、完結している作品がないので、このお話は最後まで書けるよう頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年9月8日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年9月3日 21時
