月の剣 ページ18
あのあと、物の見事に熱をぶり返した私は(きっと半分は志麻のせいだ)その後2日ほど休む羽目になり、ようやく出勤したのは金曜日だった。
志麻は直前まで「金曜日なんやからもう1日くらい休めばええやん」とぶつくさ言っていたのだが、出かける時にはいつものように
「行ってらっしゃい。はよ帰ってこいよ」
と言って抱きしめてくれた。
志麻の世話の焼きっぷりは、まるで心配の権化だった。熱が出ようとも社用の携帯には何回も電話がかかってくる。冷えピタを額に貼りながら仕事をする私に痺れを切らし、電話が終わった途端に電源を切った事もあった。タバコを吸おうとベランダに出ることも禁じられ、家事も全て志麻がやってしまったから、私は手持ち無沙汰に寝ているしかなかったのだ。
志麻はあの朝のベランダで起こったことについて触れようとしなかった。熱がぶり返したこともあり、あれは実は夢だったんじゃないかとすら思うほどだ。
職場に復帰すると、そらるが死にそうな顔していた。
「ごめん、休んじゃって。大丈夫？」
「大丈夫に見える？そっちはもういいの？」
「うん。熱も下がったし、休んでた分取り戻さないと」
どうやら、忙しさに拍車がかかっているらしい。朝から電話が鳴り止まない。年末繁忙を迎えた企業が多いのに合わせて、うちの会社も忙しくなる。売上が伸びるのはありがたいが、これがあと半月も続くのかと思うと頭を抱えたくなる。
「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇です」
デスクにあった電話がなり、2コール目で取る。3コール以内に取るのは社会人の基本だ。
仕事紹介の電話が終わると、今度は社用携帯にクライアント企業から電話がかかってくる。内容は増枠についてで、クリスマス限定で10名の増員。とんだクリスマスプレゼントだ。
そういえば、志麻はクリスマスまでいるのだろうか。もしいるならなにかプレゼントしてあげてもいいかもしれない。彼には何がいいだろうか。パッと思いつくものは何もない。
14時頃にようやく休憩に入れた。そらると一緒にビルに入っている食堂に入る。彼はいつも通りのかき揚げうどんとカレーのセットだ。
私は志麻の昼ごはんを作るついでに作った弁当。午後2時(ラストオーダー滑り込みだった)だから、食堂には私たちだけだった。
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りひと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけて何よりです。がんばりますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月21日 22時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 感情移入してしまうくらい本当に面白いです（ ; ; ）更新頑張ってください！楽しみに待っています！ (2020年9月21日 4時) (レス) id: d65a61624a (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まーかーさん» コメントありがとうございます。がんばります！ (2020年9月12日 12時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
まーかー(プロフ) - 続編おめでとうございます！あぁ...すごい切ない展開...更新がんばってください！ (2020年9月11日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» コメントありがとうございます。マルボロの話はずっとどこかで出したいと思っていたので私も嬉しいです。志麻さんの話はなかなか書く機会に恵まれず、完結している作品がないので、このお話は最後まで書けるよう頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年9月8日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年9月3日 21時
