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仕事終わりに病院に行ったら、私と同じようなサラリーマンがちらほら見えた。
医者からはやはり「風邪ですね」と診断され、薬をもらった。体ももう限界で、奮発してタクシーで帰ってきた。
「………たたいま」
「おかえり」
パタパタとスリッパが擦れる音とともに、志麻が玄関に顔を出した。
「今日は珍しく早いお帰りやな」
そういったあとに、志麻は血相を変えてこちらに近寄ってきた。
「体調は？悪いんやろ」
マスクをしていても、志麻にはすぐにバレるらしい。
「風邪だって。病院にもいって、薬もらってきたから大丈夫」
「熱は？」
「38.5」
「はっ！？」
だから朝言うたやんか、と文句を垂れつつ志麻の手のひらは私の額を覆う。ひんやりしている彼の手は気持ちよかったが、その手はすぐに離れてしまった。志麻は眉を寄せながら少し怒ったような声で言う。
「いつからしんどかったん？」
「昼くらいからかな」
「半日も我慢してたん？人間は弱いんやから、あかんって」
困ったような、怒ったような顔をして、私を抱きしめた。
「おかえり、よう頑張ったな」
具合が悪くてすっかり忘れていたけれど、いつものハグに力が抜けた。
「ねぇ、あんまりくっつくと移るから。離れて」
「大丈夫やって。俺、ゾンビ」
「ゾンビって風邪ひかないの？」
「たぶん？まあ、なったらなったでAに看病してもらうのも悪くないやん？」
冷たい手で頬を撫でられる。熱があるから、ひんやりした彼の手は気持ちいい。うっとりとして目を閉じると
「………A」
と今まで聞いたこともないくらい甘い響きをした声音に驚いて目を開いた。彼の指が私の髪をゆっくりと耳にかける。アメジストのような瞳は私だけを移していて、むしろ熱が上がりそうだ。
最近の志麻は、大事そうに私に触れる。まるで、繊細な花にでも触れるみたいに。
それが照れくさくて、もどかしくて、思わず目を逸らしてしまいたくなる。
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りひと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけて何よりです。がんばりますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月21日 22時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 感情移入してしまうくらい本当に面白いです（ ; ; ）更新頑張ってください！楽しみに待っています！ (2020年9月21日 4時) (レス) id: d65a61624a (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まーかーさん» コメントありがとうございます。がんばります！ (2020年9月12日 12時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
まーかー(プロフ) - 続編おめでとうございます！あぁ...すごい切ない展開...更新がんばってください！ (2020年9月11日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» コメントありがとうございます。マルボロの話はずっとどこかで出したいと思っていたので私も嬉しいです。志麻さんの話はなかなか書く機会に恵まれず、完結している作品がないので、このお話は最後まで書けるよう頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年9月8日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年9月3日 21時
