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だから私は、ありったけの想いを込めて、愛しい人の名前を呼んだ。
「渉さん」
彼は顔を上げて、心なしか潤んだような目で私を見つめた。きらめく翡翠の瞳に、いつか私は映らなくなるのだろうか。
先程までの熱いものが、すうーっと冷えて腹の下に落ちていく。
私は、渉さんに嫌われるのが、何よりも怖い。
彼の世界から外されてしまうのが、何よりも恐ろしい。
いつかは、いつかはきっとそんな日が来る。
でも、まだそれは今じゃない。今であってほしくない。
だから私は、こういうしかなかった。
「やきもち、ですか？」
茶化したつもりの言葉は少しだけ震えていた。渉さんに気づかれなければいいと思っていった言葉は、彼の顔をほころばせるには十分だった。
花が咲くように、渉さんの困った顔は笑顔になる。でも次の瞬間には、それを誤魔化すようにして怒ったふりをしてそっぽを向いた。
「……悪いかよ」
暗に肯定する渉さんに、思わず笑みがこぼれる。
私は、まだこの人に必要とされている。
それが嬉しくて、もっとヤキモチを妬いて欲しくて、先程の質問には答えなかった。
渉さんもそれに言及することもなくレストランを出ると、外はすっかり真っ暗でレストランに入る前よりも寒くなっていた。
11日も半ばだから、だんだん冬に近づいてきているのだろう。
「寒いですね」
「ほんと。朝晩冷えるようになってきたからな」
「お布団から出られなくなっちゃいますね」
「遅刻すんなよ」
「しないように、善処します」
そんなことをぽつり、ぽつりと話しながらも、やっぱり私が渉さんの隣を歩くことはない。少し後ろを歩きながら、渉さんの背中を見つめながら帰路に着く。
その背中に手を伸ばしたいというのは、きっと私のわがままだ。
いつもの通りに、きっとこのあと彼は私を家まで送ってくれて帰るのだろう。
少しでも長く渉さんと一緒にいたいから、歩くペースはゆっくりめだ。彼が歩く速さを合わせてくれるのを私は知っている。
そんなことを考えながら歩いているなんて、前を歩く渉さんは、露ほども知らないだろう。
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あ(プロフ) - 初コメ失礼します。りひとさんの作品がとても大好きで過去作品も全て読ませて頂いております。続編もぜひ読みたいのですが、パスワードをお教えしてもらうことは出来ますでしょうか...？何分仕様が分からず、この場で聞くこと自体間違っていたら申し訳ありません。 (2021年2月10日 1時) (
レス) id: e8d9509923 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - あすかさん» 返信遅れてすみません。コメントありがとうございます。更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年12月14日 21時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 初コメ失礼します！めちゃめちゃ面白くて見る度に評価押しちゃいます(笑)今1番を楽しみにしている作品です！更新頑張ってください(T_T) (2020年11月5日 21時) (レス) id: a6330c149b (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - いずりすさん» ありがとうございます。いつもと違うテイストに挑戦するので私自身もどきどきしています笑お楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。いずりすさんも体調には気をつけてくださいね。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» ありがとうございます。お楽しみいただけるよう頑張ります。Quuさんもお体に気をつけてくださいね。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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