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「この感じだと、このままうちで決まりそうだな」
「はい。さすが浦田さんですね」
2件目の打ち合わせを終えて外に出ると、暗くなり始めていた。10月になったとたん、日を追う事に暗くなるのが早くなっている気がする。
「Aちゃんも、前よりも緊張せずに話せてたね。説明も分かりやすかったから、きっと担当者も分かってくれたんだと思う」
「本当ですか？」
緩む頬を抑えきれずに聞けば、彼は
「ほんとほんと」
とニカッと笑って私の頭に手を伸ばそうとして、やめた。
触れてくれたらいいのに、と思ってしまう自分に呆れがこみ上げる。外でそんなこと、できるわけがないのだ。私たちは上司と部下、同じ会社の人間。ただそれだけなのだから。
その不自然な距離にお互い気付いてしまって、目を合わせることもできずに俯く。
「じゃ、戻ろうか」
「はい」
「今日、車で来てるから会社まで乗っけてくよ」
浦田さんは車のキーを見せながら私に笑いかける。たったそれだけのことなのに、私は仕事なのを忘れてしまいそうになった。ふたりでいられる時間が長くなるからだ。
「ありがとうございます」
「営業車だけどな」
そんなの関係なかった。浦田さんが運転する車に乗れる。2人きりで。それだけが私にとって重要な事だった。そんなふうに思ってしまう自分に嫌気がさすが、それでもときめく気持ちはとめられない。
白のハイブリッドカーの助手席に乗れば、静かに車が動き出す。コインパーキングから出てすぐの信号は赤だった。
「………え」
その隙に、伸びてきた彼の手は、するり私の右手を攫っていく。誰かに見られているわけでもないのに、私の顔はカッと熱くなった。
「………この間、約束してたのにごめんな」
この間、というのは記念日のディナーのことだとすぐに分かった。
「大丈夫です。急用だったんですよね」
そう私が答えると、浦田さんは私の方を向いてこう言った。
「今日の夜は？どこか美味しいもん、食いに行こ」
「………いいんですか？」
「大丈夫。今日あいつ、実家に帰ってるし」
あいつ、と浦田さんが言うのは、彼の奥さんのことだ。私と浦田さんが会えるのは、決まって彼の奥さんが実家に帰っているときとだいたい相場が決まってる。
「だから、帰ったら報告だけしてすぐに退社しろよ。俺もそうするから」
私が頷いたところで信号が青になる。
駐車場に着くまで、手は繋がれたままだった。
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あ(プロフ) - 初コメ失礼します。りひとさんの作品がとても大好きで過去作品も全て読ませて頂いております。続編もぜひ読みたいのですが、パスワードをお教えしてもらうことは出来ますでしょうか...？何分仕様が分からず、この場で聞くこと自体間違っていたら申し訳ありません。 (2021年2月10日 1時) (
レス) id: e8d9509923 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - あすかさん» 返信遅れてすみません。コメントありがとうございます。更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年12月14日 21時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 初コメ失礼します！めちゃめちゃ面白くて見る度に評価押しちゃいます(笑)今1番を楽しみにしている作品です！更新頑張ってください(T_T) (2020年11月5日 21時) (レス) id: a6330c149b (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - いずりすさん» ありがとうございます。いつもと違うテイストに挑戦するので私自身もどきどきしています笑お楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。いずりすさんも体調には気をつけてくださいね。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» ありがとうございます。お楽しみいただけるよう頑張ります。Quuさんもお体に気をつけてくださいね。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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