終焉 ページ10
夜が、明ける。
風は止んでいた。朝凪というのにふさわしく、しずかに。
太陽が登ることのないこの世界だが、まるで朝日が登ってくるような気さえした。
穏やかと言ってもいい、終焉の訪れ。歪んだ夢にも似た一夜の終わりが。
森をわたる風の匂いが違ってきた。草木がみずみずしく満ちている。
「終わった………」
坂田のつぶやきが、うらたの耳に届いた。
全員、満身創痍だった。
「………終わったな」
「勝ったんやな、俺ら」
志麻が少し笑って、センラは信じられないというように言った。
全員ぼろぼろだったが、誰ひとり欠けていなかった。
「……………帰るか」
誰かがそう言って、よろよろと歩き出す。足の折れたAは、坂田に支えられて足を引きずりながらも何とか歩いていた。
屋敷の外は、星が瞬いていた。こんな風に空を見上げるなんて、いつぶりのことだろう。
気の抜けた会話をしながら、少しずつ帰路に着く。
「ちょ………A！？痛い？足、痛いん！？」
いちばん後ろにいた坂田から、焦ったような声がして、うらたたちは思わず坂田のほうを向く。そして、その原因をすぐに悟った。
Aが、泣いていたのだ。
彼女は、音も立てずに涙を流していた。
坂田の言葉に、Aは静かに首を振る。そして、Aを支えるように腕を掴んでいた坂田の手を、彼女はそっと包んだ。
「………皆さん、無事でよかった」
小さく、Aがそう言った。
そのたったひと言に、うらたはどうしようもなく胸が震えた。
今度こそ、守れたのだ。
仲間も、Aも、未来も。ぜんぶ。
「間に合って、よかった」
志麻が小さく返事をした。その言葉に、坂田が頷く。
「俺、Aがいなくなったら、死んじゃったらどうしようって………」
坂田の声が震えた。Aにもらい泣きしそうになっているのだ。
「………とにかく、全員生きてるし。めでたしめでたし、やろ？」
場の空気を和ませるように、センラがそういった。
「そういえば、るったん。この間みたいな移動魔法って使えへんの？そしたらすぐに帰れるやん」
「無理。もう俺の魔力、スッカラカンだし」
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ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2022年6月26日 23時) (
レス) @page23 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 気づいたらこのお話に飲まれてました。とても素敵なお話をありがとうございました。他の作品も読みます！(*'▽'*) (2022年6月20日 21時) (レス) @page23 id: 020978a023 (このIDを非表示/違反報告)
ぷ(プロフ) - 読むたびに世界観に飲まれていきました。気付いたら最後まで読んでいました。素敵な世界を覗けてよかったです。ありがとうございました。 (2020年9月10日 20時) (レス) id: 5dd39aece4 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - 水無。さん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたのであれば何よりです。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月4日 23時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
水無。(プロフ) - ことで話にのめり込みやすかったですし、特に坂田さんの初々しいしい恋の表現の仕方には毎回きゅんきゅんさせられました。りひとさんの作る作品が大好きです。新作も前の作品も漁ってたくさん読みたいと思います。素晴らしい作品をありがとうございました！ (2020年9月3日 21時) (レス) id: 2fdfcf242b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年8月1日 11時
