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「俺が来なかったらAになんて言おうとしたん？」
他愛ない話をしばらくしてAが船内に戻ったあと、志麻は空を見上げたままセンラにたずねた。
「………なんやろうね。ってか、聞いてたん？」
「悪かったよ」
志麻は軽く笑ってそう言い、
「けど、抜け駆けはよくないんじゃあないですかねぇ？」
と、意地悪く笑った。
「そんなん、言わんほうが悪いんやろ？よーいどん、でスタートするわけやないし」
「まあな」
「前にも言うたかもしれんけど、後悔はしたくないっていうか」
「…………そうだな」
心地よい沈黙が流れる。なんだかんだ、志麻とふたりで話すのは久々かもしれないとセンラは思った。
「…………そういや、Aのケガが治ったら、屋敷に戻るって。うらたさんから」
「そか。じゃあ、戻って落ち着いたら、人間界に行って食べるもの買ってくるわ。また、皆で食うやろ？」
センラの顔がパッと晴れる。Aと約束していたのだろうか。おそらく料理名なのだろう。志麻には聞き馴染みのない単語をぽんぽんあげていく。
あまりにも当たり前のようにセンラが言うものだから、志麻は次に言おうとしていた言葉を言い淀んでしまった。
「志麻くん……？」
言葉に詰まった志麻に、センラが不審に思い問いかける。
「Aは、あいつは………あいつの選択に任せる」
「それって」
「俺たちと来るか、ゴーストシップに残るか。もしくは、人間界に戻るか。Aのケガが治ったら本人に選択させる」
「だからセンラも、覚悟決めとけよ」
「……志麻くんは、それでええの？」
「あ？」
「Aがどんな選択しても、後悔しないん？」
「仕方ねえだろ」
吐き捨てるように言った志麻に、センラはカチンときた。
「仕方ない仕方ないっていつまで逃げるん？そうやっていつまでも逃げてるから、Aは俺たちのところから居なくなってまうんやろ！！」
「人のせいにすんじゃねえ！俺やって……っ！」
志麻の瞳に明らかな悲しみをみつけ、センラは思わず口を噤んだ。志麻のこぶしが震えている。センラは気持ちを落ち着けるように大きく息を吐いた。
「すまん。言いすぎたわ」
「俺も……」
志麻も何かをぐっと堪えるようにして俯いた。彼も辛いのだ。センラと同じように。
けれどAを思って、彼女の未来を思って、その選択をした。きっとそれは、うらたも同じ。
「ちょっと、1人にさせて」
「…………わかった」
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ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2022年6月26日 23時) (
レス) @page23 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 気づいたらこのお話に飲まれてました。とても素敵なお話をありがとうございました。他の作品も読みます！(*'▽'*) (2022年6月20日 21時) (レス) @page23 id: 020978a023 (このIDを非表示/違反報告)
ぷ(プロフ) - 読むたびに世界観に飲まれていきました。気付いたら最後まで読んでいました。素敵な世界を覗けてよかったです。ありがとうございました。 (2020年9月10日 20時) (レス) id: 5dd39aece4 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - 水無。さん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたのであれば何よりです。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月4日 23時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
水無。(プロフ) - ことで話にのめり込みやすかったですし、特に坂田さんの初々しいしい恋の表現の仕方には毎回きゅんきゅんさせられました。りひとさんの作る作品が大好きです。新作も前の作品も漁ってたくさん読みたいと思います。素晴らしい作品をありがとうございました！ (2020年9月3日 21時) (レス) id: 2fdfcf242b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年8月1日 11時
