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「行くか」
「そうやね」
もしかしたら、この中にAがいるかもしれない。
怖い思いをして、どこかで震えて助けを待っているかもしれない。
2人の足取りに、迷いはなかった。
中に足を踏み入れると、一気に真っ暗闇に包まれた。悪魔は夜目のきくほうだから、しばらくすると目が慣れてきた。
思っていた以上に、奥行きのある建物のようだ。奥に続く廊下が見える。ふたりを誘うように、風が吹き込んできた。
近くに怪しい影はない。
ふたりの足音だけが、あたりに響く。
廊下の右側には、扉がいくつか並んでいた。左側は窓がある。ひとつひとつ部屋を確認していくと、どれも同じような作りで黒板と、机と椅子が並べてあるだけだった。相変わらず、建物の中も蜘蛛の巣だらけで気味が悪い。最後の部屋も何もなかった。収穫はゼロだ。
「誰もおらんやん。なぁ、志麻くん」
返事がない。おかしいと思って後ろを振り向くと、そこには志麻の姿がない。さっきまで、一緒にいたはずなのに。おかしい。
「まさか………」
悪夢に呑まれたんじゃ………
センラの背中を嫌な汗が伝った。
夢の中に入る前に言われた、そらるの忠告を思い出した。
「悪夢の中に入るってことは、自分も悪夢に取り憑かれる可能性があるってこと。くれぐれも、気をつけて」
あのときは、
「ミイラ取りがミイラになっちゃしゃーないわな」
なんて笑い飛ばしていたけれど、そんなに甘くはなかったらしい。とはいえ、志麻なら悪夢でもなんでもぶち壊して、自分で戻ってきそうな気もする。
「まずは、志麻くんのこと見つけて、Aのこと助けて、本体を叩く」
まずはそれだ。そのことだけ考えよう。余計なことを考えれば、ナイトメアに隙を与えてしまう。こんなところで、立ち止まってはいられない。
部屋を出ると、さっきまでの廊下がなくなっていた。どうやら、構造が変わるというのは本当らしい。
目の前には、さっきまでなかったはずの階段。誘われているようにしか見えないが、いまは前に進むしかない。
こつん、こつん、とブーツの靴底がなる。しん、と静まり返った建物内は、志麻の気配すら消えている。いったい、どこに行ってしまったんだろうか。
2階に上がると、生あたたかい風が奥の方から吹いてきた。
なにがいる。本能がそう言っている。センラは先程よりも警戒しながら歩みを進めた。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
