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どこまでも続くようなクモの巣。
立ち込める血の匂い。
物音一つしない、生きているものの気配もない、死の世界。
ここは下界なんかよりもよっぽどひどい。
「………Aに会う前まで、力だけが全てだと思ってた」
志麻は、淡々とした口調で語り始めた。そして、ちらりと一瞬だけセンラの方に視線を向ける。
センラはどうして志麻が急にこんなことを話し始めたのか意図がわからなかった。
志麻は昔、あの屋敷で暮らす前まではかなりやんちゃをしていたと聞いたことがある。喧嘩っ早いことでも有名で、気に入らないやつは片っ端から殺していたらしい。
…………いまではそんな面影もないが。
「けど、慣れっていうか………恋って怖いもんやな。あいつがいないとダメなんだわ」
ああ、その感覚、知ってる。
遠い昔、堕天したばかりの頃を思い出す。
その頃のセンラは、殺されたいとばかり願っていた。ナナのいないこの世界に生きることは、意味が無いことなのだと思っていたからだ。
下界に生きているものは、死んだら消滅する。輪廻転生から外れて、存在そのものが消えてなくなるのだ。
ナナがいないなら、もうこの世界なんて必要ない。自分が生きている意味もない。
衝動であの天使と浮気相手を手にかけてしまった自分を、センラは悔やんだ。
それはたしか、土砂降りの雨の日だったと思う。
死にたくて死にたくて、動かず、食事もせず、森の中で衰弱していたところを魔物たちに襲われ、今度こそ死ねるのだと思った。やってくるだろう痛みにぎゅっと目を瞑る。けれど、いつまで経っても痛みはやってこなかった。
「おい、なにやっとるん？」
センラの前に現れたのが、志麻だった。彼は魔物をあっという間に蹴散らすと、センラを屋敷に連れていった。そこで坂田やうらたとも出会い、4人で暮らすことになったのだ。
「…………志麻くんは、どうしてあのとき、俺を助けたん？」
「なんで？」
「放っておけばの垂れ死んだ、そうなるべきだったのかもしれない俺を」
志麻はずっと前を向いたままだった。
「そういう言い方するやつには教えてやらんわ」
「ひどいわ」と言おうと口を開きかけた時、カン、カン、と近くから何かが落ちる音がした。ふたりはぴたりと足を止める。
ふたりは顔を見合わせ、音のした建物の入口を見た。電気もついていないからか真っ暗で、中の様子をうかがうことは出来ない。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
