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Aが船内に戻っていったのは、何度か戦った後だった。
どうしてAは傷を増やしてまで、そらると鍛錬をしているのだろう。そうまでする理由が、うらたたちには分からなかった。
自分たちが守ればいい。そういうものだと思っていた。Aが遠くに行ってしまうような気がしたのだ。
彼女はそらるに向けておじぎをすると、こちらに気づくことなく扉を閉めた。そのことに、少しだけ寂しさを感じる。
「見たいもの、見れたでしょ？」
Aを見届けたあと、そらるがこちらを向いて得意げに言った。
「………どういうことだよ」
こぼれた声は、戸惑いから少しだけ震えていた。
「どうもこうも、Aが隠してたのはこれのことでしょ。俺が口止めしてたし」
確かにそらるの言う通りだ。Aが隠していたこと、その事実はわかった。けれども、その理由が分からない。どうして彼女が戦い方なんか学ぶ必要があるのか。
そんな汚いことは、彼女にはさせくない。
うらたはそらるに詰め寄った。
「なんでAにこんなこと教えてるんだよ」
そらるはなにも答えない。それがさらにうらたを苛立たせた。そらるはいつもそうだ。なんでも分かっているような顔をして、上からこちらを見下ろしている。
ときどきそれが、たまらなく嫌になる。まるで自分は、昔から成長していないのだと、まだまだガキのままなのだと言われているような気がするのだ。
たしかに彼は大人で、船長だから周りを見る力にも、統率力にも長けている。自分だってリーダーなのだと思うけれど、そらると比べるとまるで敵わない。その度に、うらたは自分自身にイライラした。
そして、今日は一段とイラついている。自分自身にも、そらるにも。
「Aにこんなことさせて、どうしようっていうんだよ。あいつを戦わせる気かよ？」
「望んだのは俺じゃない。彼女だ」
「は？」
一瞬、何もかもが止まった気がした。
いま、そらるはなんと言ったのだろう？
「だから、戦えるようになりたいって俺に言ってきたのはAだよ。俺から言ったんじゃない」
「な……んで、」
うらたも志麻も、ひどく動揺した。まさかAからそんなことを言ったなんて、信じられない。
まだ目が覚めてから一週間ほどしか経っていない。それなのに、どうしてそんなことを言い出したんだろう。なんで、自分たちではなくそらるに頼ったのだろう。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
