アイスクリームの攻防 ページ9
木々の緑は日に日に濃くなり、マンションの脇に植えられた紫陽花の色も、だんだんと深く鮮やかになってきていた。
降り出した雨はある日、そのままやまなくなった。
そうして、関東地方に梅雨入り宣言が出されて1週間ほどたった頃、Aとセンラは珍しくピリピリとしていた。
「………で、何があったん」
ライブ終わりの飲み会で志麻が口を開いた。思わぬ志麻の言葉に、センラは飲んでいたハイボールを喉につまらせそうになる。
普段通りにしていたつもりだったが、相方にはお見通しらしい。
「…………喧嘩した」
「センラとAが？珍しいやん」
志麻が目を見開いて驚く。彼が驚くのも無理はないだろう。
センラもAも、基本的に辛いことや腹立たしいことがあっても、その感情を表に出すことはない。ましてや、それを相手にぶつけることもしない。
「それで、原因は？」
「…………先週の金曜、Aとコンビニ寄ってから帰ったんやけど」
結局、Aはセンラの希望もあって今まで住んでいたアパートを解約し、センラのマンションに移り住むことになった。
生活はいままでと変わらない。Aが朝ごはんを作ってくれて、優しい声で起こしてくれて。夜は一緒に帰ってくる。同じベットで寝ているが、まだキス止まりなのは、情けなくて志麻にも言えない。
「土曜の夜に、俺がAの買ってきたアイス、食べてもうたんよ」
「それだけ？」
「…………そのアイス、コンビニの新商品だったらしくて。Aも何軒かはしごして買ったやつだったらしい」
いま思えば、コンビニの新商品を食べるのが趣味の彼女にとって、大打撃だったに違いない。
「あぁ、それはあかんわ。あいつの数少ない趣味みたいなもんやし」
「そうやんなぁ………しかも俺、アイスくらいでなんでそんなに怒るんって言い返してもうて……」
その先は、ため息しか出てこない。
次の日から、朝ごはんは用意してくれているものの、起こしには来てくれないし、キスだってしていない。出社も退社も別々にされるし、尽く避けられている。
寝るのだって、いつもだったらセンラの寝室で一緒に寝ていたのに、いまは彼女は自室に鍵をかけてこもってしまっている。
「なんとかせなあかんとは思っとるんやけど………」
「ふぅん………」
目をあげると、志麻はにやにやと笑いながらこちらを見ていた。その含みのある言い方に、センラは首を傾げる。
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まつり(プロフ) - なるほど！！！続編も短編も両方楽しめるということですね！読者的にはすごい得した気分です！掛け持ちになると思うので自分のペースでお身体壊さないようにしてください…！更新、楽しみにしてます！ (2020年4月11日 19時) (
レス) id: dc65f13ca7 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まつりさん» ありがとうございます。続編に入る前に、短編を書いて思い出しながらやっていこうと思っています。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年4月11日 19時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - いきなり更新されて驚きました！大好きな挨拶シリーズの新しいお話が読めてとっても幸せです！！！ありがとうございます！ (2020年4月10日 0時) (レス) id: dc65f13ca7 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - 。。。さん» ありがとうございます。解除いたしました。ご迷惑おかけし申し訳ございません (2019年11月12日 17時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
。。。 - オリジナルフラグはちゃんと外して下さいね。。。 (2019年11月12日 17時) (レス) id: 0cc258f9a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2019年11月12日 16時
