グットモーニング・トウキョウ【センラ】 (ページ27)

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「さて、A」

ゆっくりと昼食を食べたあと、話を切り出したのは志麻だった。

「何があったか、話せるよな？」

有無を言わせぬ声だった。

「ちょ、それはAちゃんがかわいそうじゃ、」

「センラは黙っとき」

ピシャリと言われて、センラは口を噤んだ。

志麻は、Aが目覚める前に見つけた白い封筒を取り出す。

彼女の肩が、ぴくりとはねた。

「A、誰にされたん」

もう一度、志麻が言う。

その姿は妹を叱る兄そのものだ。

Aは何度か薄く口を開くも、言葉にはならず、空気だけが吐き出された。

恐怖がよみがえってきたのか、手が微かに震えている。

「…あいつが、きた」

ようやく、彼女は震える唇でそう言った。

「…は？あいつって…もしかして、3年前のあいつか!？」

志麻は合点がいったように驚きの声をあげた。
Aはその通りだと言うようにひとつ頷く。

彼女が言うには、昨晩インターホンがなり、センラか志麻だろうと思って相手を確認せず扉を開けてしまったらしい。

センラは、話が全くもって見えなかった。

「え、どういうことなん？俺だけおいてかれてるんやけど」

そう言うと、志麻はハッとしたように口を噤んだ。

Aはというと、しばらく下を向いてそうして決心したような顔で顔を上げた。

「センラさん、私の昔話を聞いてくれますか？」

「A、大丈夫なん？」

志麻が心配するように彼女を見やる。

「センラさんだから、大丈夫」

志麻からとAから。
センラは2対の目に見つめられる。

ひとつは覚悟を決めたと言わんばかりの真っ直ぐな瞳。
もうひとつは、心配に揺れている。

彼はゴクリと息を飲むと、ゆっくりとわかった、と首を縦にふった。