グットモーニング・トウキョウ【センラ】 (ページ12)

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傍から見たらきっと、奇妙で歪な3人組なのだろうと思う。

数歩先、関西弁でテンポよく会話をする男たちを見ながらAは思った。

2人は電車で来ていたようで、自宅まではAの車で向かう運びとなっていた。

俺がお前の兄貴になってやるよ、と彼に言われたのはもう何年前だっただろうか。

それはいまでも継続中らしい。

志麻さんのが持つビニール袋には、今日の夕飯である鍋の食材をはじめ、Aの1週間分の食料がパンパンに入っている。

いつの間にか、鍋をするのはAのアパートに決まっていた。
…志麻さんが「Aちゃんの家がいい！」と駄々を捏ねたからであるが。

鍋は以前鍋パした時のものがあるとの事で、上司のセンラが自宅から持参すると申し出た。

あれよあれよという間にこのあとの流れは決まり、Aは彼らを乗せて車をうならせた。

夕飯前の時間でごった返していた大通りを抜けると、ほとんど車の往来はなくなった。

人気もまばらになってようやく、Aたちはアパートに到着した。
午後の5時といえど、あたりはもう薄暗くなってきている。

車を降りてすぐに北風がひゅう、と吹いてAはコートのポケットに手を突っ込んだ。

ついでに、すぐに出せるように部屋の鍵も握っておく。

いったん、土鍋を自宅に取りに行くセンラと別れ、Aは荷物を持った志麻を自室に招き入れた。

「変わってへんなぁ。大学の頃と、」

彼は塞がっていた両手を解放すると、Aの部屋をぐるりと見渡した。

彼の言う通り、Aの部屋は大学時代から部屋の配置をほとんど変えていなかった。
変わったといえば、ゲーム機と本が増えたくらいだ。

収納ラックもベットもソファも、折りたたみ式のローテーブルも大学時代から使っているものだ。

志麻さんが部屋を眺めている間に、Aは買ってきたものを冷蔵庫にしまい、夕食の準備を進めようと考えた。

一人暮らし用の部屋のキッチンは狭いため、2人立つのは難しい。

男性陣は今日は思い切り飲むつもりらしい。
ちゃっかりアルコール類もビニール袋に入っている。

冷蔵庫には、ビールにハイボールと並んで昨日買ったレモンサワーがちょこんと鎮座している。

彼らはどのくらいご飯は食べるのだろうと思いながら、いつもより米を多めに浸漬しておく。

お酒を飲むならと冷凍しておいた鶏肉を取り出す。
昨日の夜、生姜醤油につけておいたものだ。
照り焼きで出したら酒のつまみにもおかずにもなるだろう。