グットモーニング・トウキョウ【センラ】 (ページ7)

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佐藤Aはたぷたぷとした、ぬるま湯のような幸せに包まれていた。

いままでにない、不思議な感覚だった。

いままで、身内を含め自分自身の存在を認め、選び、そして好意を持って話しかけてくる存在などいた事がなかった。
10年以上前に姿を消した兄と、5年程前に出会った、バイト先のバーの常連客の男を除いては。

そういう意味で、折原千羅という男は彼女の中で、非常に稀有な存在であった。

コンビニの新商品を食べながら、ゆるゆるとそんなことを考える。

新商品のマンゴーチョコレートサンドはクリームに癖があって、イマイチだった。

いままで、人と馴れ合うことを避け、のらりくらりと生きてきた彼女は、人間関係構築能力に著しく欠けていた。

折原千羅という男との会話も、全て向こうが話題を振りこちらが答えるだけのもので、なにか不快に思うこともない。

彼女にとって、それは今までになかったと言って等しいことで、どう対応すべきか分からないものでもあった。

そんなことを片隅で思いながら、彼女はゲームを起動する。

彼女はなにかと勝負事が好きだった。

麻雀に花札、ポーカー…賭け事と言われるものも一通りやってきた。

ゲームも同じだ。
特に、対戦ゲームを彼女は好んだ。

今起動したのはApexLegendsだ。
オンラインのバトルロイヤルゲーム。
対人ゲームは得意分野だった。

今夜は雨だ。眠れそうにない。
せっかくなら、夜通し勝負と洒落こもうとのんびりそう考える。

長時間同じ場所で過ごせるように、定位置には飲み物とツマミ程度の夕食を広げる。

週末の夜ということもあり、すぐにマッチングした。