風邪 ページ9
風邪をひいて近くのお医者さん行ったら「軽い肺炎になってるね」と言われ、童守病院にやってきました。
受付で番号が表示されるのをひたすら待っていると、ふと陰ができた。顔を上げると、そこには翡翠の瞳が二つ。ぱちぱち、とそれは驚いたように瞬きする。
「Aさん」
それはまごう事なき私を嫁にする宣言をした齢4百年の妖狐、玉藻さんだった。
「玉藻さん、どうして」
「どこか体調が優れないのですか?」
いや、体調が優れないから来てるんですけれども。私がした質問にしっかり言葉をかぶせて来た玉藻さんに、私はなんとかめげずに言葉を続けようとした。
「あの」
「君、今空いてる部屋は」
「34番が空いてます、玉藻先生♡」
「さ、Aさん、こちらへ」
はい負けた。
玉藻さんに手を引かれるがまま診察室へ通され、椅子に座らされる。
「初診ですか?」
「あ、はい…呼吸器内科にかかる予定で…」
「なるほど。…ふむ」
カチ、カチ。無機質な音を響かせながらパソコンの画面と睨めっこする玉藻さんを眺めていると、ちらと玉藻さんがこちらを向いた。
「どうかされましたか?」
「あ、いえ、何も」
「安心してください、貴方の病気はこの私が必ず治してみせます。」
にこ、と綺麗に微笑むと、玉藻さんはまたすぐにパソコンの画面に視線を戻す。その目は真剣そのものだ。ただの風邪の延長線なんだけどなあ。
しばらくして、「軽度の肺炎で違いないようですね」と言い、画像をしっかり見終えたらしい玉藻さんが目頭を少し抑えてからこちらを見る。相変わらず、その目は優しい。
「抗生剤を出しておきます。しっかり飲みきってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「それと…」
玉藻さんが私にくれたブレスレットに手を触れる。
「熱っ」
「ああ、すみません」
私の手からブレスレットを外し、玉藻さんは少し赤くなった私の手首を撫でる。もう片方の手はしっかりとブレスレットを握っていて、色が変わっちゃってるので多分まだ何か力を注いでいるんだと思う。
「また少し私の霊力を入れておきました。…あまり無理なさらないでくださいね」
そう言って私の手首にブレスレットを通すと、玉藻さんはまた綺麗に微笑んだ。
「…玉藻さんも、無理なさらないでくださいね」
酷く温かいブレスレットに視線を落とし、彼の期待に答えられない私は呟くようにそう言うことしかできなかった。
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サヤノ - めんたい先輩さん» こんばんは、お元気でしたか? 私はちょっと元気と言うか、コロナ騒ぎで色々あって死ぬ程ストレス発散しそうで気が滅入っていたんです…実はコロナに巻き込まない様に私は買い出しして、自斎しています、ですが・・毎日真剣に読むのも肝心ですので大丈夫です。 (2020年4月21日 20時) (レス) id: 7cd0816ef6 (このIDを非表示/違反報告)
珠華姫(プロフ) - 最近、ぬーべーハマってきて、中でも玉藻先生大好きだから本当に面白いです!楽しみにしてますね。無理はなさらないように頑張ってください (2019年7月10日 21時) (レス) id: d92aabc503 (このIDを非表示/違反報告)
めんたい先輩 - みなさん有難うございます、大変励みになったのでたくさん更新しておきました( ˘ω˘ ) (2018年12月31日 20時) (レス) id: da9cc08ab3 (このIDを非表示/違反報告)
サヤノ - 此度の連載夢小説の狐の嫁入りをとことん応援しています。 (2018年10月26日 8時) (レス) id: dd5aa67050 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - 嗚呼ーー玉藻先生ヤバいーーー 更新待っています(^ω^) (2018年7月27日 19時) (レス) id: 1185acbb8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めんたい先輩 | 作成日時:2015年3月9日 0時