人狼 ページ11
「何事かと思えば…お前か、レム」
突然真隣りから聞こえた声にぎょっとして横を向けば、「こんばんは、Aさん」と相変わらず整った顔でほほ笑む玉藻さんがいた。いやいつの間に。ていうかなぜここが。ハッ、まさかおすわりって言ったとき玉藻さんの力が働いたのか…通りで急におとなしくなりすぎだとは思ったけど。
「たま、」
「妖狐さん!」
いやすごい遮りよう。思い切り私の言葉を遮った人狼を玉藻さんがキッと睨む。あ、シュンとしてる。慰めるように頭を撫でてあげる。
「Aさん、帰りが遅くなるなら私に言ってくださいとあれほど…」
いや、そしたら毎日あなたと帰ることになっちゃうので…。「すみません」と形だけ謝るが、玉藻さんはそんな私の心の内を見透かしたように目を細めて小さくため息をついた。
「貴方は妖に好かれやすい…それが分かりませんか?」
「好かれやすい、っていや今まさにこの人狼くんに襲われそうになってたんですが」
「はあ…」
玉藻さんが見てくださいと言わんばかりに人狼くんに視線を投げる。そこには未だにしっかり伏せをして私を見ている人狼くんの姿がある。
「いいですか、Aさん。彼は人狼。私と同じ高等妖怪だ。そんな彼がわざわざこんな街中まで出向き、あまつさえあなたの"伏せ"が解かれるまで待っている…はっきり言って、異常です」
「伏せについては、玉藻さんの力が働いてるんじゃ…」
「それは最初の"おすわり"の時だけです。伏せに従ったのは紛れもないそいつの意思です」
「え?!」
ばっと人狼くんの方を向けば、確かにキラキラした目で見られてる気が…。
「私の妖気に引かれて来たとは言え、こんなにすぐ貴方を嗅ぎつけたのは貴方のにおいが私たち妖怪にとって…云わば良いにおいだからなのです」
「よ、よいにおい?」
「下等な妖怪であれば、すぐに食らいついてしまうレベルのね」
「…まじですか?」
「大まじです」
何それ。え、私ってもしかして鳴ちゃんと同じ妖怪にモテるタイプってこと…?
玉藻さんが薄く笑って「大丈夫ですよ」と私の手をつかむ。
「貴方には私がついていますから」
さ、帰りましょう。と私は玉藻さんに手を引かれ、結局家まで送ってもらってしまったのだった。お爺は玉藻さんを見てさして驚いた様子もなく「今日はそーめんじゃ」と言ってすぐに布団に戻っていったのだった。
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サヤノ - めんたい先輩さん» こんばんは、お元気でしたか? 私はちょっと元気と言うか、コロナ騒ぎで色々あって死ぬ程ストレス発散しそうで気が滅入っていたんです…実はコロナに巻き込まない様に私は買い出しして、自斎しています、ですが・・毎日真剣に読むのも肝心ですので大丈夫です。 (2020年4月21日 20時) (レス) id: 7cd0816ef6 (このIDを非表示/違反報告)
珠華姫(プロフ) - 最近、ぬーべーハマってきて、中でも玉藻先生大好きだから本当に面白いです!楽しみにしてますね。無理はなさらないように頑張ってください (2019年7月10日 21時) (レス) id: d92aabc503 (このIDを非表示/違反報告)
めんたい先輩 - みなさん有難うございます、大変励みになったのでたくさん更新しておきました( ˘ω˘ ) (2018年12月31日 20時) (レス) id: da9cc08ab3 (このIDを非表示/違反報告)
サヤノ - 此度の連載夢小説の狐の嫁入りをとことん応援しています。 (2018年10月26日 8時) (レス) id: dd5aa67050 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - 嗚呼ーー玉藻先生ヤバいーーー 更新待っています(^ω^) (2018年7月27日 19時) (レス) id: 1185acbb8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めんたい先輩 | 作成日時:2015年3月9日 0時