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阿 「今日は楽しかったね」
あ 「う、ん。楽しかった…」
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お店を出ると、そりゃあ日も暮れてる。
23時。17時ごろには集まったというのに、もうそんなに時間って経っていたのか…
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彼がプレゼントしてくれたネックレスを握りしめる。
車内のミラーには嬉しそうに頬を緩ませる私が映っていて…
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こんな自分の顔なんて知らない。きっと初めて見た。
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阿 「明後日からさ、俺数日間こっち居ないから」
あ 「えっ、そうなの…?」
阿 「社長の付き添いで出張」
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少ない一ヶ月という恋人の有効期間。
少しでも一緒に居たいという気持ちが芽生える中での『出勤』という彼のワード。
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そっか…そうなんだ。
寂しいというのが今の本音だけど、でも。
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あ 「頑張ってね…?」
阿 「うん。向こう着いたら連絡するから」
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優しくも、どこか寂しげなそんな彼の声が耳に届いた。
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車がふと止まる。赤信号。
ずっと前を見つめて居た彼が一瞬だけ私を見る。そして、言うんだ。
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阿 「今日という日にAと居られてよかった」
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目が合ったのはほんの一瞬。
だって、だって…そのまま、悪戯に信号は青に変わってしまったんだもの。
この一瞬の隙を狙ったというなら貴方は本当にずるい。
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阿 「…じゃあ、またね」
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ああ。あっという間に家路に着いてしまった。
正直言うとまだ一緒に…いたい。だけど、そんなこと言えそうにもないから。
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せめて、せめてこのくらいは亮平の彼女として。
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あ 「亮平…」
あ 「こんな温かい気持ちになれたのは久しぶりだった。…すっごく幸せな時間だった」
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あ 「今日は本当にありがとう…」
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亮平の表情なんて分からない。
でも今は心の思うままに気持ちを預けてみた。
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あ 「…今は亮平の彼女だから…」
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しばらく間が空く。
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少しして、ごめん無理。そう呟いた彼はハンドルにかかった手を私の頭の後ろに添えてそのまま唇を重ねた。
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数秒重なり合う、溶けるような甘いキス。
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ねぇ、亮平…?
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分かってる。
貴方が私に本気じゃないってことも。あと2週間もすればこの関係も終わりを迎えるってことも。
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でも、私気付いてしまったの。
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私は貴方を欲してる…
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そして、貴方への気持ちにも…
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作者名:くろーばー。 | 作成日時:2020年12月29日 22時