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何か、とは随分と抽象的なものである。それは私の体の一部であったり、そもそも物質的な形を持っているものではなかったりと、考えようによっては無数にある答えの中で、そんな恐ろしい約束を交わしてしまった私はどうかしていたのだ。
『…目、とかですか？』
パッと頭に浮かんだのはそれだった。普通とはかけ離れた紅色は、我ながらいい差し出しものになると思ってしまったのである。しかし口に出してからはっとする。目が見えなくなる、というのはまずいのではなかろうか。
「目はいらぬな。その目は私の加護がある証拠。」
『加護の証拠、ですか？』
「私の霊力があるからお主の目は赤く、妖にみいられやすい。心当たりはありすぎるぐらいだろう？」
ありすぎるくらい。それはもう、最近は。
「だから、そうだな。お主の色ならどうだ。その、墨のように艶やかな黒色。それで手を打とう。」
拒否権など存在しないような物言いである。急かすようにチロチロと覗く舌に、『それで、いいのなら。』と了承した。
「…変わらぬな、お主は。私の霊力など無くても妖に好かれるようなお主が、何故私の話に乗る必要があった。今も、そうだ。記憶もなにもなく、理不尽であるはずの話に何故、そう軽々と了承できる。」
鳥居の向こうで、クルリと白蛇がとぐろをまく。黒い瞳が、私をとらえてはなさなかった。
『…幼い頃の私は、知らなかったんじゃないですかね、貴方の霊力が無くても妖に好かれる、なんて迷惑な話。』
「ふむ、そうか。この地へ迷い混んだ時点で分かっていると思ったが。なら違う質問をしよう。お主は何故、鳥居をくぐらぬ。あの音を聞いてなお、何故くぐらぬのだ。」
あの音、というのは鈴の音のことであろうか。チリンチリンと、誘うような澄んだ音。響き渡る、綺麗な。
『帰れなくなる気がしたからですかね。』
この鳥居をくぐってしまえば、二度と元の場所には戻れないような気がした。多分その勘は間違ってはいない。
「勘がいいな、お主は。幼い頃もそう言って、此方へはこなんだからな。」
ガラガラと何かが崩れる音がした。
「時間か。いけ、鬼の子。約束通り色は貰う。…すまんな、私もお主にみいった妖と同じ。お主のその色が欲しかった。意地悪をしたな、許せ。」
＿＿そして私がお主を加護していることを、いつまでも忘れてくれるなよ
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える(プロフ) - 里菜さん» コメントありがとうございます(*^^*)読みやすいような文章を書けているのだとその言葉で安心いたしました。ご期待にそえるよう、これからも頑張らせていただきます(*^^*) (2018年8月26日 9時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
里菜(プロフ) - すごく、文章の構成がお上手なのでとても読みやすくてわくわくします！これからも頑張って下さい！ (2018年8月26日 0時) (レス) id: 316072219b (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ねこさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます(*^^*)刀剣乱舞は初めて書かせていただいたのでそういう言葉は嬉しい限りです。ご期待にこたえられるよう、頑張らせていただきます。お気遣いまでありがとうございました(*^^*) (2018年8月24日 15時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - とても面白いです。こんな面白い話の刀剣乱舞の夢小説はなかなか無いのですぐにお気に入り登録してしまいました。更新無理しない程度に頑張ってください。 (2018年8月24日 15時) (レス) id: 8d47e5281f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：える | 作成日時：2018年8月20日 18時
