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演練に向かえ、というのは政府からの命だった。上から人に命令するという職業というのはどれだけ気持ちのいいことだろう。黒革の椅子に足を組んで座り、そうして言葉を口にする。それだけで彼らには金が発生するのだ。
その命令にどんな意思があるから分かったものではない。それが単純な命なのか、はたまた時間稼ぎとして、何かを隠すためのカモフラージュであるものなのか。
今回のそれは後者だった、というのが現状目の前の情報から理解できることである。
『鬼退治ですか?さながら桃太郎にでもなるおつもりで?』
「おや、随分と気が強くなったものですねぇ。」
『気のせいでは。それに、こう銃を向けられれば多少ながら強気にならないといつ撃たれるか分かりませんので。』
目の前の男は私に銃を向けていた。鈍く光る黒い鉄屑は一瞬で人を恐怖に突き落とし命を奪う。
ヒュッと喉がなった。
「と、いいつつ怯えているお姿は可愛らしいですね。」
声からは相変わらず感情を読み取ることが出来ない。しかし文面から私を馬鹿にしていると気づかないほど私は鈍くなかった。
「冗談です、冗談。怒らないでくださいよ、おっかない。別に私たちは貴方を退治しにきたんじゃあありません。おふざけですよこれは。」
はっはっは、そう笑った数週間ぶりに顔を合わせた役人は銃をしまう。
「ただの抜き打ち調査ですよ。」
抜き打ち調査。ブラック本丸が増えている今、政府はそういう形で処置をとっているのかと感心する。まあ、それとこれとは話が別だが。
『で、結果は?』
「不思議な位普通ですね。濁った霊力で建て直したとは思えないくらいには普通です。」
嫌味な奴、と心のうちで悪態をつく。言い回しというものがいちいちトゲトゲしいのだ。
「ああ、そうそう。鬼になったんですね、おめでとうございます。」
『わざわざそれ、言う必要ありますかね。』
「そりゃもう。」
眉を寄せる。仲間のもとへ向かう男の後ろ姿を睨み付けた。
「ああ、いい忘れておりました。」
顔だけを私に向けて、彼はにんまりと笑う。「お幸せそうでなによりです。」その言葉に目を丸くする私を見て、満足げに再び背を向けた。
大きくまばゆい光が辺りを包む。時空の移動時に発生するこの光に目を細めた。
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える(プロフ) - 里菜さん» コメントありがとうございます(*^^*)読みやすいような文章を書けているのだとその言葉で安心いたしました。ご期待にそえるよう、これからも頑張らせていただきます(*^^*) (2018年8月26日 9時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
里菜(プロフ) - すごく、文章の構成がお上手なのでとても読みやすくてわくわくします!これからも頑張って下さい! (2018年8月26日 0時) (レス) id: 316072219b (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ねこさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます(*^^*)刀剣乱舞は初めて書かせていただいたのでそういう言葉は嬉しい限りです。ご期待にこたえられるよう、頑張らせていただきます。お気遣いまでありがとうございました(*^^*) (2018年8月24日 15時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - とても面白いです。こんな面白い話の刀剣乱舞の夢小説はなかなか無いのですぐにお気に入り登録してしまいました。更新無理しない程度に頑張ってください。 (2018年8月24日 15時) (レス) id: 8d47e5281f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2018年8月20日 18時