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随分長いこと寝ていたらしい。口が半開きで寝ていたのか、喉が痛かった。



「主、起きた?」



加州様はよかったとでも言いたげに微笑む。親指で目元をなぞられ、自分が寝ながら泣いていたことを知った。



『主…。私のことですか?』



「そ。本格的にここの審神者に就任。」



『へえ。』



特にこれといった感想を抱くことはない。成長痛のような痛みに全身おそわれ、それに耐えるように身をまるめた。



呪いの影響か、鬼になった影響かはわからない。



「あー、痛いね。」



あやすように頭を撫でる加州様。人に頭を撫でられるのはいつぶりであろうか。



『…そういえば私、結局誰にも斬られませんでしたね。』



初日の覚悟はなんだったのだろう。



「そりゃあね。むしろ歓迎って感じだし。…それよりごめんね。女の子なのに。」



あの男に体を差し出したことだろう。軽蔑してくれてもいいのに。神様に気を使わせてしまっている私は罰でも当たるのかもしれない。けれどどうしようもなく、この空間が心地よかった。



『…いえ。』



ふと、頭を撫でてくれている彼の手を見る。剥がされた爪の所は血が固まっていた。そうだ、あの男は結局手入れをしてない。



ガバリと起き上がる。加州様は驚いたように「え、なになに?」と声をあげた。



『手入れ、しましょう。』



立ち上がって加州様の手を引く。



「え、いいの…?」



『神様をこんな状態で放置だなんて罰当たりもいいところでしょう。罰が当たるのはごめんです。』



加州様は目を丸くして、クスリと笑った。神様は全員、こんな綺麗な顔で笑うのだろうか。



いつの間にか彼が私の手を引いていて、流れるように手入れ部屋に案内された。



「わ、依頼札も手伝い札も結構ある。」



『どれだけ物を寄越したって、審神者の霊力がなきゃ意味がないっていうのに。だから駄目なんですよ、政府は。いい加減です。』



「そーね。」



いつまでも彼は笑っている。私はさっきから可笑しなことは何一つ言ってないはずだが。



『加州様。直したあと、他の神様方も呼んできてはくれないでしょうか?』



「…いいけど。なに、一日で全員手入れする気?」



当たり前だ。



『量だけはあるらしいので。』



__加州様も、先に手入れされて負い目を感じる必要がなくなるでしょう?



彼は参った、という風に笑った。

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える(プロフ) - 里菜さん» コメントありがとうございます(*^^*)読みやすいような文章を書けているのだとその言葉で安心いたしました。ご期待にそえるよう、これからも頑張らせていただきます(*^^*) (2018年8月26日 9時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
里菜(プロフ) - すごく、文章の構成がお上手なのでとても読みやすくてわくわくします!これからも頑張って下さい! (2018年8月26日 0時) (レス) id: 316072219b (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ねこさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます(*^^*)刀剣乱舞は初めて書かせていただいたのでそういう言葉は嬉しい限りです。ご期待にこたえられるよう、頑張らせていただきます。お気遣いまでありがとうございました(*^^*) (2018年8月24日 15時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - とても面白いです。こんな面白い話の刀剣乱舞の夢小説はなかなか無いのですぐにお気に入り登録してしまいました。更新無理しない程度に頑張ってください。 (2018年8月24日 15時) (レス) id: 8d47e5281f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:える | 作成日時:2018年8月20日 18時

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