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夕食はおいしかった。私の発言のせいで暗くなった雰囲気をどうにかしようとは思わず、黙々と食べきると一人、食器をもってその場を去った。
食器を洗い、こんのすけを呼ぶ。自室に案内してもらうと、彼はおやすみなさいと姿を消した。
『おやすみなさい、ね。』
そんな挨拶を交わした記憶は随分古く、そう思えば私は普通の人間以上に恵まれない環境で生きてきたんだと実感する。
漫画やアニメのヒロインにはもってこいな過去ではないかと思うが、それにしては少し生々しすぎるかと苦笑した。
ヒロインは汚れがなく純粋が鉄則である。
布団を出すのも億劫で、そのまま畳の上に転がった。少し埃っぽいが、今は泥のように眠ってしまいたかった。
__…俺、あんたなら俺達を愛してくれるんじゃないかって、本当は期待してるんだ。
『…重いなぁ。』
愛、だって。
こみ上げてくる笑いは、きっとこの言葉と縁がなさすぎるせいなのだ。それに、今時愛だなんてそこらのカップルだって口にしない。
愛がなくたって性行為はできるし、子供を生むことだってできるのだ、人間は。
弱味に付け入るのが得意で、うわべだけの言葉を口にできるのも人間。全く、めんどくさい能力を与えられたものである。
次生まれ変わるなら何になりたいと聞かれれば、私は間違いなく人間と答えることはないだろう。
というか、生まれ変わりたくない。
私はきっと前世で大変行いが悪かったから今こんな仕打ちを受けているのだ。なら来世にだって期待は出来ない。
「…風邪を引いてしまうよ。」
人の気配がした。その言葉になにか発するのも面倒で目を閉じる。
フワリとゆれた、紫色の髪が目にはいった。
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える(プロフ) - 里菜さん» コメントありがとうございます(*^^*)読みやすいような文章を書けているのだとその言葉で安心いたしました。ご期待にそえるよう、これからも頑張らせていただきます(*^^*) (2018年8月26日 9時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
里菜(プロフ) - すごく、文章の構成がお上手なのでとても読みやすくてわくわくします!これからも頑張って下さい! (2018年8月26日 0時) (レス) id: 316072219b (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ねこさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます(*^^*)刀剣乱舞は初めて書かせていただいたのでそういう言葉は嬉しい限りです。ご期待にこたえられるよう、頑張らせていただきます。お気遣いまでありがとうございました(*^^*) (2018年8月24日 15時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - とても面白いです。こんな面白い話の刀剣乱舞の夢小説はなかなか無いのですぐにお気に入り登録してしまいました。更新無理しない程度に頑張ってください。 (2018年8月24日 15時) (レス) id: 8d47e5281f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2018年8月20日 18時