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お風呂でばったりキャー、等という展開はない。パジャマは愛用しているもので、それに身を包んだとたん眠気に襲われた。
体がだるく、座り込む。
『あー、立てない。』
自傷気味に笑って、なんて滑稽なんだと左手を右手で握った。
「…見つけた。ちょっと、大丈夫?」
加州様の声である。ゆっくり振り向き、『勿論です。』と強がってみるものの、顔をあげることすら億劫だった。
「どこが。」
呆れたようにため息をつく彼。「ほら、立てる?」と私の腕を肩にかけた。
『…ありがとうございます。』
フラりと立ち上がる。今日一日で随分と弱ったものだ。
「ご飯、食べれる?」
『そこまでしてもらう義理はありませんよ。』
お腹はすいている。けれど食べる、という行動がめんどくさいうえに、眠い。子供みたいだ。
「俺らは食べなくても生きてられるけど、人間は食べないと死んじゃうよ。」
『加州様達だって、食べなくても生きてられるかもしれませんが、ある程度傷つけば死んじゃいますよ。』
「…そーね。」
会話はない。よたよたと彼のリードのもと歩くと、大勢の神様達のいる部屋へ到着した。勝手に自室へ送り届けてくれると思っていたが、どうも彼は世話焼きらしい。
「皆、これでも久々に食事をするんだよ。あんたの歓迎会みたいなもの。だから、あんたがいないと始まんないわけ。」
やんわり微笑む彼は美しい。ここの審神者が神様達を自由に行動させているのは、私が優しさに弱いのを知っているからだろうか。
そう思えば意図せずとも眉がよる。その表情をみた彼は、「あー、やっぱ迷惑だった?」と眉を下げた。
『…いえ。調度いいですし、少しお話もしましょう。』
机のうえには沢山の食べ物が並んでいる。手作り料理なんて何年ぶりかも忘れてしまった。
加州様と共に腰をおろす。神様達の目が私へ向き、次の瞬間いっせいに頭を下げた。
目を丸くし、唖然とするには十分な光景じゃなかろうか。
口々に聞こえる謝罪の言葉は心地いいものではない。これじゃまるで、私はここの救世主になったみたいではないか。
『…あの、頭をあげてはくれませんでしょうか。神様に頭を下げさせてしまって申し訳ありません。』
「それはこの謝罪を、聞き入れるつもりはないってことか。」
声を発したのは、昼私に刀をむけた真っ白な人。
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える(プロフ) - 里菜さん» コメントありがとうございます(*^^*)読みやすいような文章を書けているのだとその言葉で安心いたしました。ご期待にそえるよう、これからも頑張らせていただきます(*^^*) (2018年8月26日 9時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
里菜(プロフ) - すごく、文章の構成がお上手なのでとても読みやすくてわくわくします!これからも頑張って下さい! (2018年8月26日 0時) (レス) id: 316072219b (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ねこさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます(*^^*)刀剣乱舞は初めて書かせていただいたのでそういう言葉は嬉しい限りです。ご期待にこたえられるよう、頑張らせていただきます。お気遣いまでありがとうございました(*^^*) (2018年8月24日 15時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - とても面白いです。こんな面白い話の刀剣乱舞の夢小説はなかなか無いのですぐにお気に入り登録してしまいました。更新無理しない程度に頑張ってください。 (2018年8月24日 15時) (レス) id: 8d47e5281f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2018年8月20日 18時