白鳥沢マネは出来るヤツ２【白布賢二郎】

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好きだ、と言われることはたまにあっても、自分から女子に言ったことなんて1度もない。



「好きだ、A。」




言ってから、あれ、スキのイントネーション合ってたか？なんて不安になるけど、多分大丈夫だった。


口に出してみて、改めて思う。
あぁ、俺、ずっとコレを言いたかったんだよな。









中一の夏に初めて名前を知った。それまでは。女バレで同学年なことは知っていたけど、クラスも違うし関わりも全く無かった。

中一の夏休み中のある日、学校の体育館で練習していて、ちょうど休憩に入った時。
壁に寄りかかってスポドリを飲んでいると、声をかけられた。



「なあなあ、賢二郎。」


「ん？何？」


「見てみろよアイツ、すげえ上手くね？俺と同じクラスの花巻っていうんだけどさ。」





チームメイトの中でも結構仲の良い方だった奴が指をさしたのは、体育館で俺たちの隣のコートでゲーム式の練習をしている女バレの方。




「アイツって？誰？」



「ほら、今センターの。」






その子はちょうどCクイックに入り、見事にスパイクを決めた。


ふーん。確かに上手い。

背は結構低めだけど、ジャンプ力はかなりあるしブロックつくのも早い。ブロック飛んだ後もすぐに速攻入るしコンビも安定感あるな。

ざっと見ただけでもこれだけのことが分かった。





「この前の3年の引退試合も、1年なのにレギュラーで試合出たんだとよ。」


「へー、すごいな。」


「だろ？なんか、花巻と喋ってるとさ、あ、コイツ白布と仲良くなりそう！って思ったんだよな〜だから後で話しかけに行こうぜ！！」


「え〜？マジで？」




今思えばあの友人に心から感謝だ。
昔の俺は、自分から女子に話しかけに行けるようなタイプではない(今もだけど)。

もしあの時、無理やり引っ張って行ってくれてなかったら、この後2年で同じクラスになっても大して仲良くなることはなかったかもしれない。




Aは、バレーをするのが大好きなわけではないらしい。

「いや、バレーは好きなんだよ？やってて楽しいとは思うんだけどさ、なんか、どうしても1歩引いて自分のこと見ちゃうって言うかさ……うーん、なんて言えばいいんだろう。……なんか、見てる方が楽しい。」



あの時、俺には言っている意味がよく分からなかったけど、高校に入ってなんとなくわかった気がする。Aは、マネージャーになるために生まれてきたと言ってもいいくらい、支える立場、というのが向いている。

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