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「よいしょっと」「!?」
伸ばした腕を取られて引っ張られた。そのままガクくんの胸に飛び込む形で抱き寄せられる。受け身も取れずに彼の胸にぶつけた鼻がちょっとばかし痛い。
「ちょっと!?」
「飲ませてって」
「自分で飲んだらいいじゃん」
「Aちゃんに飲ませて欲しいの」
「力つよ!?
あーもう!そもそも近すぎて飲ませるの無理だって!まず離れよ?!」
胸元に押し付けられたままのこの距離で何もできやしない。遠慮なしに回る腕の力にギブアップとガクくんの背を叩く。アルコールで力加減バカになってない!?
緩められた腕から抜け出そうと顔をあげると目の前にガクくんの顔。こちらを見て意味深な表情で口角をあげた。
私を見ていた目線をテーブルのペットボトルへと移すと片手を伸ばした。今のうちに離れられるかと思ったけど、もう片方の腕が逃がさないと掴んでいて身動ぎしただけで終わった。
片手で器用にくるくると回してキャップを開ける。あー、すぐ飲むかと思ってキャップ緩めていたのが仇になった。
そのペットボトルの口を私に向けてきた。ん?
「ほらAちゃん、くちあけて」
まさか、
「あ!ごっくんはしちゃダメっすからね」
傾けてきたので零したらカーペットとか服が濡れちゃうと思って反射的に口に含んだ。口に入ったのを見てガクくんがペットボトルをテーブルに置く。頬に両手が添えられた。
「Aちゃ、んぐっ!」
自由に動けるようになったのと口を開けた瞬間を見計らって、ひっつかんだペットボトルの口をガクくんの口に差し込んだ。
酔っ払いめ!
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数日前。
「わぁ!むぎちゃん!?」
「Aちゃーん!ぎゅ!」
「かわいい〜。完全に酔っ払ってるね、お水飲もうね」
「うん、あ」
「力入らない?じゃあ飲ませてあげるね」
「……ぷは!飲ませてくれてありがとう」
「どういたしまして……ガクくん?どうしたの?」
「や、なんでもないっす」
水を飲ませてもらいたいがアルコールで暴走した結果。
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作者名:Nk | 作成日時:2024年1月21日 22時